2011 Fiscal Year Annual Research Report
パイクロア型酸化物トポロジカル絶縁体候補物質の磁気輸送特性測定による研究
Project/Area Number |
11J04376
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
江藤 数馬 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / 輸送特性 / 結晶成長 / カルコゲナイド |
Research Abstract |
トポロジカル絶縁体とは物質の内部は絶縁体であるがその表面に特殊な金属的状態が生じる物質である。 現在トポロジカル絶縁体は多くの注目を集める研究対象となっており、理論的にトポロジカル絶縁体の候補物質として様々な物質が提唱されている。一方、これまでのトポロジカル絶縁体の実験的な取り組みは数種類の物質のみに限られている。本研究では新たなトポロジカル絶縁体候補物質としてパイロクロア型酸化物に着目し、その単結晶作製と詳細な輸送特性測定を行うことによって、トポロジカル絶縁体特有の現象が観測されるかどうかを検証する事を目指している。今年度はそのパイロクロア型酸化物を研究するのに先だって、これまでに理論的に提案されたトポロジカル絶縁体候補物質の中でも特に興味深く、実験的に試料を作製・評価する事が重要な課題となっていたタリウム系および鉛系のトポロジカル絶縁体候補物質の研究を行った。 まずタリウム系に関しては、TlBi(S_<1-x>Se_x)_2という物質の試料作製を行い、共同研究による光電子分光実験でトポロジカル相と非トポロジカル相の間の量子相転移に関する知見を得た。また鉛系に関しては、Pb(Bi_<1-x>Sb_x)_2Te_4という物質が新たなトポロジカル絶縁体である事を光電子分光実験によって確認し、さらにこの系においてはBiとSbの組成を変えると表面伝導キャリアの符号が変わる事を輸送特性の測定からも確認した。また、トポロジカル絶縁体表面状態の新たな評価手法を確立するために、トポロジカル絶縁体の表面に磁性物質を接合したデバイスの作製・評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった新しいトポロジカル絶縁体の発見を鉛系物質で達成し、またその物質はトポロジカル絶縁体表面状態の伝導キャリアの性質を制御する事が出来得る系であり、トポロジカル絶縁体の実験的研究の対象を広げる事に大きく貢献したといえる。この他にもタリウム系物質での発見、トポロジカル絶縁体を用いたデバイスでの試みなどトポロジカル絶縁体の実験的研究の進展に大きく貢献できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により目標の新しいトポロジカル絶縁体物質を発見する事が達成できており、今後の課題としてトポロジカル絶縁体の表面状態の輸送特性を評価する手法の確立を目指しつつ、パイロクロア型酸化物でのトポロジカル絶縁体の実験的研究に取り組んでいく。パイロクロア型酸化物はトポロジカル半金属に属すると最近の理論研究で報告され、この物質系での実験的検証がより必要とされる状況にある。ただしパイロクロア型酸化物のトポロジカル絶縁体としての性質を評価するのは従来法では困難である事が予測される為、トポロジカル絶縁体を用いたデバイス研究を並行して行い、表面状態の特性評価法の確立および新たなトポロジカル絶縁体物質の探索を行う。
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