2012 Fiscal Year Annual Research Report
長期記憶をコードするシナプスから核への神経情報伝達の動態解析
Project/Area Number |
11J04427
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 昌俊 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カルシウム / 遺伝子発現 / CaMKシグナリング / FRETイメージング |
Research Abstract |
長期記憶の固定化には、シナプス入力により流入したカルシウム(Ca^<2+>)が、CaMK経路またはERK経路を介して、転写因子CREBをリン酸化し、遺伝子発現を誘導すると考えられている。しかし、シナプス入力に対して、どのようにCa^<2+>情報が核に伝わるのかについて未だ理解が進んでいない。この過程を明らかにするために、シナプス入力に伴い、核へとシグナルを伝達する様子を時空間的に解析する必要がある。しかし、これまでの刺激法では、細胞体も同時に刺激することになり、細胞体刺激とシナプス刺激を切り分けることが困難であり、空間情報を得ることができなかった。 この問題を克服するために、昨年度までに、これまでに開発したFRETプローブとUVグルタミン酸アンケージング法を組み合わせる系を立ち上げることに成功し、樹状突起に限局したCa^<2+>上昇により、CREBが活性化することを見出した。研究計画の2年目の最終年度においては、樹状突起に限局して上昇したCa^<2+>により活性化されるシグナル分子実態の同定及び動態解析を行った。まず、薬理学的にCaMK経路とERK経路のどちらかが担っているかを検討した結果、CaMK経路であることを見出した。次に、ノックダウン及びレスキュー実験により、CaMKの中でCaMKIVが担っていることを見出した。また、PAGFP-CaMKIVを用いて、その動態を解析した結果、CaMKIVがシナプス入力依存的に樹状突起から核へより多く移行することを見出した。以上より、シナプス入力により活性化したCaMKIVの核移行がCREB活性化のタイミングを制御することが示唆された。本研究は、長期記憶の固定化におけるシナプスから核へのシグナル伝達機構の解明に重要な貢献をなすと考えられる。
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