2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J04541
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤原 崇志 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 亜鉛 / 輸送体 / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
重金属の一つである亜鉛は、生体内において様々なタンパク質の活性、構造保持に必要な微量必須元素であるが、植物は亜鉛欠乏だけでなく亜鉛過剰に晒されても生育が著しく阻害される。したがって、植物細胞内の亜鉛分布を決定付ける亜鉛輸送体に関する研究は、植物が備える亜鉛恒常性機構を明らかにする上で非常に重要となる。これまで当研究室では、Arabidopsis thalianaから液胞膜局在型亜鉛輸送体AtMTP1(A.thaliana metal tolerance protein 1)を同定し、AtMTP1が過剰亜鉛耐性に必須であることを明らかにしてきた。研究代表者藤原崇志は、そのホモログであるAtMTP12が他のAtMTPsと比べてアミノ酸配列が約2倍も長い点に着目し、AtMTP12が他のAtMTPsとは異なる独自の機能と有すると考え、研究を開始した。 2012年度、研究代表者は、A.thalianaの培養細胞を用いて、AtMTP12タンパク質が他のMTPと比べて分子量の大きいタンパク質であり、その発現は細胞外亜鉛濃度に依存しないこと、そしてA.thalianaプロトプラストを用いた一過的発現から、AtMTP12が小胞体に局在することを明らかにした。これらのことから、AtMTP12は小胞体膜に恒常的に発現しており、細胞質にある亜鉛を小胞体に輸送すると予想された。そこで、液胞膜に局在する亜鉛輸送体を欠失させた過剰亜鉛感受性酵母にAtMTP12遺伝子を導入したが、過剰亜鉛感受性は相補されなかった。そこで現在は、液胞膜以外に局在する様々な亜鉛輸送体を欠失した酵母変異株を用いて、AtMTP12の亜鉛輸送能を調査する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
巨大タンパク質AtMTP12を検出した報告はこれまでにない。しかし、「おおむね順調に進展している。」を選んだ理由として、AtMTP12タンパク質の亜鉛輸送能を評価出来なかったことが挙げられる。しかし、AtMTP12の亜鉛輸送能が証明出来れば、新規亜鉛輸送体として非常に大きなインパクトを与えることが出来ると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、AtMTP12の輸送解析に焦点を当て研究を進める予定である。これまで酵母を用いた相補性実験では、液胞膜に局在する亜鉛輸送体を欠失させた酵母株しか使用していないため、他の亜鉛輸送体を欠失させた酵母を用いて、様々な条件で亜鉛輸送能の有無を検証する予定である。これに加え、他のイオンについても輸送活性の有無を検討する必要がある。また、AtMTP12遺伝子破壊株を用いて、AtMTP12の生理的役割についても調査する。しかし、AtMTP12が小胞体に局在することを考慮すると、これまでの文献にあるような過剰亜鉛や亜鉛欠乏といった条件だけではなく、小胞体の亜鉛輸送の停滞が植物の生育に影響を及ぼすような条件を検討する必要がある。
|
Research Products
(3 results)