2011 Fiscal Year Annual Research Report
FRET計測と網羅的遺伝子発現抑制を基盤とする細胞増殖情報伝達系のシステム生物学
Project/Area Number |
11J04556
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 芳久 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | FRET / システム生物学 / MAPK |
Research Abstract |
情報伝達分子EGFR、Ras、ERK、PI3K、PKA、JNKの活性を可視化するFRETバイオセンサーを安定的に発現する6種類のHeLa細胞を樹立した。これらの細胞に上皮細胞増殖因子EGF刺激や各種阻害薬を与え、過渡応答をタイムラプスイメージングにより取得する。この大規模FRETイメージングを行うために、蛍光画像を大規模取得する実験手法を確立した。そして、得られた画像から分子活性を自動的に定量解析するための解析アルゴリズムをMATLABソフトウェアにより作成した。このプログラムは、FRET画像と核染色画像をもとに細胞を自動認識し、画像処理から分子活性の定量解析までの一連の処理を自動で行う。 上記の手法を用いて各FRET細胞株に種々の刺激を与えてFRETイメージングを行い、得られた大規模データを解析した結果、これまでに知られていないシグナル伝達を示唆するいくつかの結果が得られた。(1)MEK阻害剤によりS6KのFRET Ratioがわずかに上昇することが観察された。これはMAPKがPI3K経路を抑制することを示唆している。(2)PI3K阻害剤によりPKAのFRET Ratioが減少した。PI3K経路に属する分子がPKAを活性化させている可能性がある。(3)RSK阻害剤によりERKのFRET Ratioが上昇した。RSKはERKの下流に存在するため、この結果はRSKからERKへの負のフィードバックが存在することを示唆している。(4)FRET細胞株にPLCのドミナントネガティブ変異体を発現させ、EGF刺激を与えた時、ERKのFRET Ratioがまったく上昇しない細胞集団が観察された。ドミナントネガティブ変異体の発現量が多い場合にERKが抑制されると推定された。PLCはERからCa2+を放出させるこどに関与しており、ERK活性がCa2+依存的であることが推測される。(5)(3)において、ERKのFRET Ratioが上昇していたにもかかわらずRasのFRET Ratioは上昇しなかった。RasはERKの上流に位置し、通常はEGF刺激に対してRasとERKのFRET Ratioはともに上昇する。ERK活性化のためには、Rasは定常状態と同じ活性で十分である可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画のとおり6種類のFRETバイオセンサーを安定発現するHeLa細胞を樹立した。また、大規模FRETイメージングを行うための実験手法、画像処理手法およびデータ解析手法を確立した。これらの手法を用いて大規模FRETイメージングを行い、データを順次取得、解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
大量取得した画像データから細胞を自動認識して解析するプログラムの精度を改善していく方針である。そして、大量の解析結果を整理し、容易に閲覧、抜粋できるようなデータ管理手法またはシステムを構築する必要性がある。これらを通して、FRETイメージングの結果から未知のシグナル伝達情報をより的確に見出すことを目指す。
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