2013 Fiscal Year Annual Research Report
FRET計測と網羅的遺伝子発現抑制を基盤とする細胞増殖情報伝達系のシステム生物学
Project/Area Number |
11J04556
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 芳久 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | FRET / システム生物学 / MAPK / Akt |
Research Abstract |
(1)複数の遺伝子変異が細胞内情報伝達と薬剤抵抗性にもたらす影響をシミュレーションにより検証した。まず外部データベースから遺伝子変異を持つ細胞へ分子標的薬を投与した際の効果についてのデータを抽出した。Braf変異単独の細胞と、BRaf、EGFR変異2つがある細胞、Braf、PI3K変異2つがある細胞ではMEK阻害剤抵抗性に大きな差がなく、BRaf、EGFR、PI3Kすべてに変異がある細胞はMEK阻害剤抵抗性が高くなっていた。ここから、BRaf変異の状態において、EGFR変異とPI3K変異はMEK阻害剤抵抗性をお互いに強め合うとの仮説を立ててシミュレーションで検証した。その結果、EGFR変異は活性化型PI3Kの濃度を上げ、PI3K変異はAktリン酸化の反応速度を高めるために、EGFR、PI3K両者の変異が入ると両者の作用はAktリン酸化作用をお互いに増幅し、高いMEK阻害剤抵抗性につながるとの結果を得た。 (2)FRETイメージングにおいて、HeLa細胞にRasのドミナントネガティブ変異体を導入してEGF刺激を加えるとPI3K下流のS6K活性が上がらないという結果を得た。しかし前年度のシミュレーションモデルはこの結果を再現しなかった。モデルにはRasがPI3Kを活性化する経路とEGFRがPI3Kを活性化する経路があり、Rasによる活性化の強さのパラメータはEGFRによる活性化と比べて非常に弱いことが原因と考えた。ただしRasによるPI3K活性化を強めると、シミュレーション結果が実験と一致しない問題が生じた。これを解決するためには、RasとEGFRが独立にPI3Kを活性化するのではなく、両者が活性化して初めてPI3Kが活性化されるという仮説を立てた。この仮説を取り入れたモデルは上記の実験結果をよく再現した。この仮説は既存の報告と矛盾しない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに作成した細胞内情報伝達系のシミュレーションモデルを用いて、遺伝子変異がシグナル伝達に及ぼす影響についてさらに踏み込んで検証をした。複数の経路がどのように相互作用するかという点について数理学的に解析し、既存の分子生物学の報告と照らし合わせて新たな知見を得た。そして本研究課題についての論文執筆を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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