2013 Fiscal Year Annual Research Report
鯨類に残留する有機ハロゲン代謝物の蓄積特性と脳移行の実態解明
Project/Area Number |
11J04570
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
落合 真理 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鯨類 / 環境汚染物質 / OH-PCBs / OH-PBDEs / 脳 / シャチ |
Research Abstract |
本研究は、鯨類の血液と脳に残留するポリ塩化ビフェニル(PCBs)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDEs)および水酸化代謝物(OH-PCBs・OH-PBDEs)を分析し、これら環境汚染物質の蓄積特性と脳移行について解析することを目的とした。本年度(25年度)は複数種の鯨類について脳試料を分析し、1-2年目に分析したスナメリの結果と併せ、鯨類における環境化学物質の脳移行および脳内分布について解析した。分析の結果、スジイルカ、カズハゴンドウ、イシイルカ、シャチ、ミンククジラ、ナガスクジラの血液と脳からPCBs、PBDEsおよび水酸化代謝物が検出されたことから、分布や食性の異なる鯨種の脳にもこれら化合物が移行・残留していることが明らかとなった。中でも、シャチの血液と脳から他の鯨種より1桁以上高値のOH-PCBs・OH-PBDEsが検出された。また、PCBs・PBDEsに関してもシャチは最も高蓄積していた。本研究で供試した知床沿岸域に分布するシャチは海棲哺乳類を捕食するため栄養段階が他の鯨種よりも高く、これら化合物が高蓄積したと考えられる。分析したすべての化合物において血中濃度と脳内濃度の間で相関関係が認められ(p<0.001)、これらの化合物が血液脳関門を通過し、血中濃度依存的に鯨類の脳へ移行することが推察された。スジイルカおよびカズハゴンドウについて脳試料を8部位(前頭葉、後頭葉、小脳、辺縁系、視床下部、脳下垂体、橋、延髄)に切り分け分析した結果、脳下垂体において他の脳部位よりも上記化合物の高蓄積がみられ、特異的な移行・残留が示唆された。全鯨種の脳から検出されたOH-PCBsは、ラットにおける小脳神経(プルキンエ)細胞の発達阻害(50pM)閾値を超過しており、鯨類に及ぼす人為・天然起源のハロゲン化フェノール類の曝露リスクが懸念される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に遂行できており、ヒゲクジラ・ハクジラ類におけるOH-PCBsおよびOH-PBDEsの脳移行・脳内分布を中心とした本年度の目標は達成できたと考えている。複数種の鯨類について分析した結果、蓄積特性の種間差を明確化するとともにリスクの高い鯨種を特定することができた。また論文投稿や学会発表も活発に行えたことから、研究の充実度は高いと自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、鯨類における環境汚染物質およびその代謝物の脳移行や脳内分布について解析を進め、脳内の特定部位へ化合物が集積することや、異性体により血液―脳移行特性が異なることを明らかにした。研究計画はほぼ当初の予定通り推進できており遂行上の問題はないが、これらの化学物質の脳移行・分布メカニズムや中枢神経系に及ぼす影響を解明するためには、実験動物やin vitro試験系による薬物動態解析が必須であると考えられる。したがって、来年度以降は、血液脳関門の培養細胞を用いたin vitro試験や実験動物を用いたin vivo投与試験により、OH-PCBs・OH-PBDEsおよび親化合物の脳移行動態と毒性影響に関して研究を進める予定である。
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Research Products
(8 results)