2011 Fiscal Year Annual Research Report
地殻流体―岩石相互作用によるき裂と鉱物脈の時空間発展プロセスの解明
Project/Area Number |
11J04630
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
最首 花恵 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 水熱実験 / シリカ鉱物 / アルミニウム / 鉱物脈 / シリカスケール / 地熱発電 |
Research Abstract |
地殻流体からの鉱物析出による開口き裂閉塞メカニズムと地殻内部イベントとの関連性を明らかにするため,実験から得られたシリカ鉱物,天然の鉱物脈,地熱発電所のシリカスケールを分析,また化学平衡計算プログラムを学び,そのデータから地殻内部現象の考察を行った. 実験サンプルは曹長石と石英を溶解して作成した高Si過飽和流体から430℃・31MPa条件下で析出したシリカ鉱物である.昨年度の実験では,流体中のAl・Na濃度(0-7ppm)が増加するにつれて析出鉱物がアモルファスシリカ→クリストバライト→石英と変化し,ICP-AES分析から流体中の濃度変化がAl:Na=1:1の相関をもつことを明らかにした。今年度はEPMAを用いて,析出物中のAlとNaにも1:1の相関性があることを見出し,流体中のAl^<3+>とNa^+がチャージを合わせてSi^<4+>と置換していることを示すことができた.一般的に天然では続成作用によってシリカ鉱物の変化が起こると考えられているが,本研究結果からは流体中のAlにより石英が直接析出するという現象が示唆された.同じ高Si濃度流体でも,溶解度の関係からアモルファスシリカより石英のほうが多量に析出するため,微量元素は地殻内部のき裂や空隙率の変化にも大きな影響を与える重要な要素であるといえる. 東北水力地熱(株)から天然の石英鉱物脈あるいは石英結晶を含む鉱物脈サンプル,地熱発電所のパイプラインで生成されたシリカスケールサンプル,葛根田の温度圧力と流体組成データを提供いただき,EPMAを用いてサンプル中のAl,Tiなど微量元素の定量分析を行った.また熱水ガス組成データを用いて,化学平衡計算プログラムのSOLVEQおよびCHIMを開発者のReed教授に師事した.これらのデータや計算結果は,葛根田地熱地域の理解,実験結果と天然環境の比較検討,および計算コードの開発に役立つと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災の影響で,昨年4~5月に予定していたオーストラリアでの分析作業が中止となり,再度機会を得たのが今年1~3月(アメリカ)であったため.
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Strategy for Future Research Activity |
シリカ鉱物析出への微量元素の影響について析出実験を行い,析出メカニズムに関してより理解を深める.特に流体中の微量元素濃度と析出速度の関係性を析出実験から示し,速度式に導入する.実験結果から速度式の理論モデルを検討し,表面反応と核形成および微量元素の影響を考慮した新しいシリカ鉱物析出速度式を定義する. 葛根田地熱地域のサンプルを天然シリカ鉱物の具体例とし,コアサンプルおよびシリカスケールサンプルをさらに分析してデータを増やす.葛根田におけるシリカ鉱物析出現象について理解を深める. 実験から導出したシリカ鉱物析出速度式を用いて析出現象をシミュレーションする計算コードを開発する.天然現象と比較検討する.
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Research Products
(6 results)