2011 Fiscal Year Annual Research Report
固体表面での単一分子応答系の構築と酸化還元による機能制御
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11J04640
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 和久 北海道大学, 大学院・総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 動的酸化還元系 / 金(111)電極 / 電気化学的双安定性 / 走査型トンネル顕微鏡 / 単一分子デバイス / 単一分子メモリー |
Research Abstract |
本年度の研究においては,固体表面に膜形成能を有する分子として,金表面へのアンカー部位となるリボ酸/イソリポ酸エステル部位を導入した動的酸化還元分子を四種設計し,実際にその合成に成功した.また,独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)ナノグリーン分野ナノ界面ユニットナノ界面グループ(代表 魚崎浩平グループリーダー)との共同研究を行い,研究代表者が赴いて共同実験を実施した.これにより,これらの分子は実際に金電極表面に固定化が可能であること,また,金電極表面においても酸化還元による状態のスイッチが可能であることを電気化学測定・表面赤外分光法により確認することにも成功した.これらの結果は,これまで溶液状態でのみ確認されてきた動的酸化還元系の酸化還元が金電極表面においても可能であることを示すものであり,動的酸化還元系が,目的である単一分子の酸化還元の制御に向けた分子構造の最適化の検討に耐えうるだけの機能を持つことが確認できたことになる.また,設計した四種の分子のうち,ヘキサフェニルエタン型の酸化還元部位が導入されたものについては,有機溶媒中ではその酸化電位と還元電位が大きく離れて観測され,大きな電気化学的双安定性を示す一方,金電極表面に固定化すると,酸化電位と還元電位の間隔が非常に小さくなり,電気化学的双安定性が変化するという,これまでに見られたことのない現象を観測することに成功した.これは動的酸化還元系の酸化還元挙動や反応機構などについての新たな知見を与えるものであると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果により,設計した分子が実際に金表面上に固定化が可能であること,そして金表面上においても酸化還元可能であることが示され,金表面上においても有機溶媒中と同様の挙動を示すもの,そして金表面上では挙動が変化するものに大別された.前者のものは計画段階において目的としていた挙動であり,研究を次の段階へ進めることが可能となったほか,後者のものについては,本研究の進展のみならず,これまで調査が行われてきた動的酸化還元系の挙動に対する新たな知見を与えるものであり,今後この系を利用する上での分子設計の指針の一つとなりうるものであると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果から,合成した化合物の金表面上での酸化還元挙動の調査が完了したことから,分子を固定化した金表面の走査型トンネル顕微鏡(STM)による表面観察,そして電気化学STMによる表面上での酸化還元と,それに伴う構造変化の観測を行い,研究計画で目的とした単一分子メモリの実現が可能であるかを調査する.同時に,金表面上と有機溶媒中で異なる酸化還元挙動を示すものについて,その原因の調査を行う.また,より整った配列で金表面上へ固定化が可能な分子の設計・合成も行い,こちらの分子についても調査を行う.
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Research Products
(4 results)