2011 Fiscal Year Annual Research Report
再認記憶の脳領野間ネットワークダイナミクス : サルfMRI賦活領域の硬膜下電極記録
Project/Area Number |
11J04682
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮本 健太郎 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 再認記憶 / 機能的磁気共鳴画像法 / サル / 硬膜下電極記録 / 皮質電位 |
Research Abstract |
2頭の覚醒下サルに,自然物や建物などの4枚のピクチャリストを記銘させ10秒程度の遅延時間の後に提示されるターゲットピクチャが見たものか否かを判断させる認知記憶課題を遂行させ,課題遂行中の脳活動を記録する事象関連型fMRI実験を行い,サルの再認記憶の想起に関わる脳領域を同定した。その結果,ヒトの先行研究と同様に,前頭葉・外側頭頂葉・内側頭頂葉・海馬にわたる広い範囲に強い賦活が同定され,賦活領域は2頭の間で強く再現した。このうち特に外側頭頂葉については近年のヒトを対象としたfMRI研究により再認記憶への関与が初めて知られるようになった領域で,それが再認記憶想起の過程においてどのような機能を担っているかについてははっきりと分かっておらず,現在も議論が続いている。外側頭頂葉のような特定の領域の機能を調べるためには,より統制された条件下で実験が可能なモデル動物を用いた研究が有用であるが,動物を用いた比較研究は現在までほとんど行われていない。なぜなら,ヒトの外側頭頂葉のうち再認記憶想起に関わる下頭頂小葉と呼ばれる領域は進化的に新しく,サル以下の下等動物において細胞構築学的に相同な領野は存在しないと考えられてきたためである。本研究課題の本年度の成果として初めて明らかになったサルの再認記憶の想起に関わる頭頂葉領域は,ヒトと同様の実験パラダイムをサルに適用することによって同定された領域で,かつ,他の領野との機能的結合がサルとヒトで似通っていることから,ヒトの下頭頂小葉と機能的に相同と考えられる。次年度以降の本研究課題を含む今後の研究によって,サルのこの領域の機能が,侵襲的な手法を組み合わせたより詳細な方法で調べられれば,頭頂葉の記憶想起過程における役割が明らかになり,ひいては,ヒトの再認記憶想起過程における外側頭頂葉の機能の理解が深まることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的を達成するための第一段階目の目標として定めた,事象関連型fMRI実験によるサルの再認記憶に関わる脳領域の同定が完了した。平成二十三年度末現在,この研究成果に関して対外発表を行う準備旨を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,本研究課題でこれまでに明らかになった再認記憶の想起に関わる領域の機能をより詳細に検討するために,サルに想起した記憶に対する主観的な確信度判断を要求する課題を付け加え,サルの確信度に応じた脳賦活の違いをfMRI法を用いて調べ,サルにおける主観記憶処理プロセスをヒトと比較検討する予定である。それが完了したら,頭頂葉や海馬などの記憶想起への関与が同定された領域に皮質電位を記録するための電極を埋め込み,これらの領域の応答のダイナミクスを高い時間解像度で記録・解析し,再認記憶想起のネットワークダイナミクスを調べる予定である。
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