2011 Fiscal Year Annual Research Report
高次新規原生生物の分類学的研究、及び真核生物初期進化の解明
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11J04684
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
矢吹 彬憲 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 特別研究員(PD)
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Keywords | 微細構造 / 細胞骨格 / 化学合成生態系 / 鞭毛虫 / アメーバ / 新規分類群 |
Research Abstract |
1.特殊環境中に生息する高次新規原生生物の探索 深海底などに存在する化学合成生態系は生物が硫化水素やメタンガスを資源として利用し成立している生態系であり、そのような環境中に特異的に生息する原生生物に関する研究はほとんど無いのが現状である。そこで私は海洋研究開発機構に所属する研究員と連携し、深海の化学合成生態系の模擬的再現とそこに生息する原生生物の探索を行っている。現在、より効率的な培養系に確立の探索とともに、実際に観察された新規原生生物と考えられるいくつかの生物の分類培養に向けた取り組みを行っている。 2.高次新規原生生物YPF923株に関する系統分類学的研究 YPF923株は、ベリクル(タンパク質性の板状構造)に覆われた扁平な赤血球状の形を呈した細胞であり腹側の開口部より生じる糸上仮足によって基質に固着し生活する従属栄養(バクテリア捕食)性のアメーバ性原生生物である。本生物は分子系統解析と光学/電子顕微鏡観察の結果から、祖先的なオピストコント類であるApusozoaに属する新規原生生物と考えるのが妥当であるとの結論が得られた。本研究内容を取りまとめた原著論文は現在、投稿中である。 3.所属不明原生生物Telonema subtileの微細構造学的研究 Telonema subtileは、沿岸域などの海洋表層に生息する従属栄養性に鞭毛虫である。本生物はこれまでにEST解析に基づく127遺伝子を用いた大規模分子系統解析が行われているが、その系統的位置は未だ十分に解明されておらず、全真核生物内で分類学的な所属が不明の原生生物として認識されている。本研究では、本種の持つ複雑な細胞骨格系の全体像を把握することに初めて成功し、それによって本種がクロミスタと呼ばれる分類群に属する様々な原生生物と部分的な形態的類似性を示すことが確認された。現在、原著論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象である高次新規原生生物を効率的に探索、発見する為のソース設備となりうる水槽培養系を確立し、既にその候補となりうる生物の検出に成功しているため。 系統的位置が不明な原生生物であるTelonemaの微細構造の把握を徹底した電子顕微鏡観察によって達成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
高次新規原生生物の探索を継続して行う。また平成23年度に確立した水槽培養系の効率化をはかるとともに、その中に生息する原生生物(特に化学合成能を持つ)の探索にも注目して行う。 培養株として確立された生物よりより詳細な形態観察と系統的位置の推定を行い、分類学的処置を施す。
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[Journal Article] Multigene phylogenies of diverse Carpediemonss-like organisms identify the closest relatives of 'amitochondriate' diplomonads and retortamonads2012
Author(s)
Takishita K., Kolisko M., Komatsuzaki H., Yabuki A., Inagaki Y, Cepicka I., Smejkalova P., Silberman JD., Hashimoto T., Roger AJ., Simpson AGB.
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Journal Title
PROTIST
Volume: 163
Pages: 344-355
Peer Reviewed
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