2012 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギーおよび低エネルギー両極限における標準理論を超えた物理の研究
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11J04752
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 雄一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超対称性粒子 |
Research Abstract |
申請者は標準理論を超えた新物理の探索を目的としている。昨年度に引き続き、本年度もスイス・ジュネーブにある欧州原子核研究機構(CERN)において研究を行った。本年度は重心系エネルギーを8TeVへと向上させた上で、昨年度の4倍に相当する約20/fbものデータ量を取得した。このデータを用いて、衝突事象の中に一つの電子もしくはミュー粒子、加えて多数のジェットと大きな消失横方向運動量を持つ事象をターゲットとし、超対称性粒子が生成されたような兆候を探索した。 重心系エネルギーが高くなることは、その分質量の大きい粒子を効率よく生成出来ることを意味するので、本年度のデータはエネルギーフロンティアにおける新物理探索にとって大きなインパクトを持っている。データを十分活かすために、まず解析手法の最適化を行なった。昨年度を大幅に超える感度を達成するため、(1)いくつかの事象選択基準を厳しくすると共に、(2)多数のジェットを要求する解析を加えた。 モンテカルロ・シミュレーションは多数のジェットを要求する領域で理論的に不定性が大きいという弱点がある。これは上記(2)の解析を行う観点から好ましくない。そのため申請者は、モンテカルロ・シミュレーションのうち不定性の大きいジェットを抜き出し、データと比較することで補正を行う手法を開発し、精度の高い予測を可能にした。 解析は現在進行中だが、予測ではmSugra模型において、グルイーノ質量1.2TeVへの感度を達成できる見込みである。これはグルイーノ対生成が主となる領域において、一般に感度が高いとされる0レプトンモードをしのぐ感度となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ取得は順調に終了し、解析をまとめる段階である。信号領域はすでに決定しており、解析手法自体も確立している。現在のところ先入観バイアスの影響を防ぐため、信号領域はブラインドして(隠して)解析をしているが、すでに背景事象の見積もり手法について十分な知見を得たと考えられるため、今後一ヶ月以内にブラインドを解除して、各種モデルに対する制限を計算する予定である。最終的な目標は今夏に論文を出版することであり、現在のところそのスケジュールに沿っていると考えられるため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、LHCは現行の重心系エネルギー8TeVから13TeVへと引き上げるアップグレードを行うため、メンテナンス期間となり、新しいデータの取得は無い。夏頃に論文の出版を行うことを目標に執筆を行い、その後は現在までに取得したデータを用いて、新しい解析手法の研究を行う。具体的には、モンテカルロ・シミュレーションに頼るのではなく、データ自身を用いて背景事象を見積もる手法である。13TeVでのデータ取得が開始されると、まもなくモンテカルロ・シミュレーションの統計量がデータに対して不足する事態が発生することが予測されているため、この手法開発は不可欠である。
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