2012 Fiscal Year Annual Research Report
LC-MS/MSを用いたキナーゼ-基質ペア情報の網羅的探索とデータマイニング
Project/Area Number |
11J04786
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今村 春菜 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | プロテオーム / リン酸化 / 質量分析 / タンパク質キナーゼ / シグナル伝達 |
Research Abstract |
タンパク質の翻訳後修飾であるリン酸化は、タンパク質キナーゼがその基質を認識しリン酸基を付与することで、基質を活性化または不活性化するスイッチの様な役割を果たす。連続的なスイッチの切り替えは、細胞内でシグナルを伝達する一つの手段として用いられており、これらリン酸化反応の網羅的な定量解析情報はシグナル伝達経路を解明する上で重要となる。しかし、リン酸化タンパク質の存在量はわずかであることから、細胞の中に存在する多様且つ大量のタンパク質の中から質量分析計を用いて検出する事は困難であった。 近年、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)の技術発展、およびリン酸化ペプチド濃縮法の開発により、基質であるリン酸化タンパク質の大量同定が可能となっている。ところが基質の大量同定が可能となった一方で、LC-MS/MS解析情報のみからはリン酸化を行うキナーゼを同定する事ができないという問題点が存在する。そのため、キナーゼと基質を結んだペア情報は依然として大部分が明らかになっておらず、リン酸化プロテオーム解析からシグナル伝達経路を解明する際の障害となっている。そこで、本研究ではタンパク質キナーゼと基質の関係性を明らかにすることを目的とし、in vitroキナーゼ法とLC-MS/MS解析を組み合わせた手法を試みた。 昨年度は、in vitroキナーゼ反応とLC-MS/MS解析を組み合わせた実験手法を確立した。具体的には、細胞抽出タンパク質とリコンビナントキナーゼをin vitroで反応させる。続いて、それらのタンパク質をペプチドに消化した後に、HAMMOC法にてリン酸化ペプチドを濃縮しLC-MS/MS解析を行う。細胞から抽出したタンパク質にはキナーゼ反応前に脱リン酸化処理を行うことで、細胞中にて付加されたリン酸化基を除去している。 今年度は昨年度に確立した手法を、複数のキナーゼに対して応用した。対象としたキナーゼは、代表的なキナーゼであるPKA,ERK1,AKT1の三種とした。また、細胞からタンパク質を抽出する際に細胞質および核に分画を行い、画分別のタンパク質を基質として用いた。その結果、これまでにPKA、ERK1およびAKT1の基質リン酸化部位としてそれぞれ約3,300,約3,800,および約1,600部位が同定された。これらの結果には各リン酸化部位情報はキナーゼによって特有のリン酸化部位が数多く含まれており、in vitroの実験系といえども各キナーゼの基質認識特異性が反映された結果である事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在着手している研究3では、主にキナーゼ-基質に関する情報解析を行う予定であった。これまでは、情報解析に必要なデータを実験により取得してきた。現在は情報解析パートに着手しており、得られた膨大な実験データに対して情報処理を行い、信頼できる基質リン酸化部位情報の抽出を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの情報処理によって得られた基質データを比較し、キナーゼの違いによる特徴抽出を行う。具体的には、リン酸化部位の周辺配列からのモチーフ抽出、基質として同定されたタンパク質の機能分類、in vivO基質との重なりの考察を考えている。さらに、抽出された特徴をもとに、これまで知られているリン酸化部位のキナーゼ予測を試みる。
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Research Products
(6 results)