2012 Fiscal Year Annual Research Report
イトヨの生活史における表現型可塑性の進化とその遺伝基盤
Project/Area Number |
11J04816
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
石川 麻乃 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 表現型可塑性 / 日長応答性 |
Research Abstract |
独立に複数回進化している残留型イトヨでTSHβ2の日長応答性の喪失が平行的に生じているのか調べるために、北米とは独立に生じたとされる日本の残留型イトヨと回遊型イトヨを用いて、TSHβ2の日長応答性の解析を行った。すると、日本の回遊型でもTSHβ2の発現が日長に応じて著しく低下するのに対し、残留型では日長応答性が低下していることが分かった。 次に、この残留型に見られるTSHβ2の日長応答性の喪失の遺伝基盤を探るために、北米と日本の集団それぞれで回遊型と残留型のF1交雑個体におけるTSHβ2の日長応答性の解析を行った。すると、北米集団では、F1交雑個体が回遊型と同様のTSHβ2の日長応答性を示す一方で、日本集団では、F1交雑個体が淡水型と同様に日長応答性を示さなかった。また、北米のF1交雑個体では、回遊型のalleleがより発現しているのに対し、日本のF1交雑個体では、残留型のalleleがより発現していた。これは、北米集団のTSHβ2の発現量の差にはcis制御配列の差が貢献しているのに対して、日本集団の発現量の差にはcis制御配列と、そこに結合するtrans因子の両方が貢献していることを示唆している。 更にTSHβ2の日長応答性の変異の遺伝基盤に迫るため、北米集団におけるTSHβ2のcis制御配列の解析を進めた。イトヨのD boxとSosite配列を解析したところ、D boxには集団間で変異はなかったが、So siteに北米の残留集団特異的なSNPが存在した。So siteには、Six/Eya familyの転写因子が結合することが知られているため、回遊型の下垂体でこれらの転写因子の発現レベルを解析したところ、Six1の発現レベルが比較的高く、また日長に応じて変動する傾向を示した。以上のことから、北米集団の残留型では、cis制御領域内のSo siteの変異によって、日長に応答して発現するSix1への結合能が変化し、回遊/残留型の日長応答性の違いを生み出している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
異なる日長応答性を示す複数のイトヨ集団において、その遺伝基盤と見られる遺伝子発現の平行進化が示唆され、更に、その遺伝基盤の一部であると示唆される有力な候補配列が発見されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
TSHβ2のintron1には、回遊/残留型特異的なSNPが蓄積した領域が発見されており(Kitano et a1.2010)、また、本年度の研究からTSHβ2のcis制御配列のDNAメチル化解析により、集団特異的なメチル化サイトも発見された。このため、今後はこれらのcis制御領域のプロモーター解析を行う予定である。 また、TSHβ2の機能解析のため、TALEN法を用いたノックアウトイトヨの作成にも取り組んでいる。
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Research Products
(8 results)