2011 Fiscal Year Annual Research Report
突然変異誘導因子AIDによる皮膚・頭頚部発癌と免疫監視による抑制機構
Project/Area Number |
11J04831
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野中 太一郎 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 皮膚癌 / モデル動物 |
Research Abstract |
癌研究において疾患モデル動物はヒトの疾患の病態解明や、薬剤および診断方法の開発等に必要不可欠である。しかし、既存の皮膚癌モデル動物は癌の発生過程や遺伝子変異のいずれもがヒトとやや異なり、ヒトの病態と酷似するモデル動物が存在しない。癌という病態を短期間で発症させるモデル動物を得るには、遺伝子改変動物の作成が非常に有効であるが、今回我々は従来の様な癌遺伝子や癌抑制遺伝子を利用した遺伝子改変ではなく、免疫抗体のレパートリーを飛躍的に増加させるAIDという酵素に着目し、AID遺伝子を利用した遺伝子改変マウスを作成した。AIDは本来Bリンパ球に特異的に強く発現し、抗体遺伝子DNAの編集を行い、無数とも言える病原菌や外来抗原に対応すべく無数の抗体の鋳型を作成する。この事によって、進化的にAID遺伝子が維持保存されているヒトを含む多くの種の脊椎動物は、無数とも言える抗体の多様性を生み出し、精緻な免疫反応を営む事ができる。AIDは経時的に突然変異を導入し蓄積していく事が抗体遺伝子領域の解析より分かっている。また抗体遺伝子のみならず、他の様々な遺伝子にも変異を導入する事が判明している。よってAID遺伝子を皮膚に高発現させる様に遺伝子操作した遺伝子改変動物は、皮膚細胞において遺伝子変異が蓄積して前癌病変から多段階過程を経て癌発症へ繋がる可能性があり、ヒトの皮膚癌と類似したモデル動物となる事が期待される。具体的には、遺伝子改変技術を用いて表皮に強く発現しているケラチン遺伝子領域下にAID遺伝子を組み込み、皮膚特異的に強制的にAID遺伝子を発現するマウスを作成した。このマウスの観察により、皮膚に腫瘍が発生する事を確認し、発生した皮膚癌検体の病理学的解析、発現解析、遺伝子変異解析を行ったところ、ヒト皮膚癌と共通した所見を得、新たな皮膚癌モデル動物を確立する事ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の年次計画通り順調に研究は進行した。具体的な研究成果としては、AID遺伝子を用いた遺伝子改変マウスの作成および解析により、新規皮膚癌自然発症モデルマウスを確立できた事である。また、ヒト臨床検体の解析を行って得られた知見の一部を関連学会にて発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ研究計画に変更はなく、予定通り遂行する。
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Research Products
(1 results)