2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規器官培養系を用いた骨軟骨前駆細胞の分化決定制御機構の解明と骨再生療法への応用
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11J04835
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北條 宏徳 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 骨分化誘導 / ヘッジホッグシグナル / Gli1 |
Research Abstract |
平成23年度はまず、器官培養系を用いたex vivo骨形成検出システムにおける骨形成シグナルの網羅的探索を行う目的で、ヘッジホッグシグナル(Hh)活性化剤・阻害剤を軸とした、BMPもしくはWntシグナル活性化剤および阻害剤の同時曝露による影響を検討した。骨芽細胞前駆細胞に発現するOsterixの免疫組織化学的解析の結果、Hh活性化剤(SAG)曝露により誘導された軟骨膜における異所性Osterixの発現はBMPもしくはWntシグナル阻害剤との同時曝露により消失しなかった。一方、Hhシグナル阻害剤であるCyclopamineを曝露すると軟骨膜におけるOsterix発現は消失するが、この効果はBMPもしくはWntシグナル活性化剤との同時曝露でも回復しなかった。また、SAGとBMPを同時曝露すると骨殻形成領域が増大した。次に、軟骨膜細胞に対するGli1・Gli2・Gli3の機能解析を行う目的で、初代軟骨膜細胞を用いた解析を行った。初代軟骨膜細胞にGli1、Gli2、Gli3を発現させた後、骨芽細胞分化マーカーの発現を検討した結果、Gli1発現により骨分化マーカーの初期分化マーカーであるalkaline phosphatase(Alp)およびbone sialoprotein(Bsp)発現が上昇した。Gli1発現によるこれらの効果はshRNAを用いたGli1ノックダウンでも確かめられた。さらに、ルシフェラーゼアッセイ、EMSA法およびクロマチン免疫沈降法により、Gli1はAlpおよびBspプロモーターの特定の領域に結合し、これらの遺伝子の転写を促進することが明らかとなった。以上より骨形成制御シグナルであるHh、BMPおよびWntシグナルの中で、Hhシグナルが軟骨膜における骨形成を最も上位で制御しており、Hhシグナルの下流ではGli1が軟骨膜における骨芽細胞分化決定に関与する可能性が考えられた。また、骨形成性シグナルの中で、HhとBMPシグナルの組み合わせは骨形成を強力に誘導することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度計画された研究内容のうち主な実験は完了し、ヘッジホッグシグナルによる骨形成促進作用の機序の一部を明らかとしただけでなく、骨形成性シグナルの中で最も強力に骨を誘導する組み合わせを明らかとしたことは、平成23年度実験計画の目的を達成していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き実験計画に沿って研究を進めていく。メカニズム解析に関して、次年度は遺伝子改変マウスを用いた遺伝学的解析を行う予定であり、既に共同研究先からの搬入済みである。
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