2011 Fiscal Year Annual Research Report
特異な多環性骨格を有する海洋性アルカロイド(-)-Sarain Aの合成研究
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11J04981
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
肥後 拓也 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機合成 |
Research Abstract |
Sarain Aは、地中海沿岸に生息する海綿より単離、構造決定された海洋性アルカロイドである。抗菌、殺虫、抗腫瘍活性といった幅広い生理活性に加え、高度に官能基化されたジアザトリシクロウンデカン骨格を含む特異な構造を有しており、合成化学的に非常に興味深い化合物である。今回我々は本化合物の効率的な合成経路の確立を目指し研究に着手した。 本年度は研究計画に基づいて、まずホモプロパルギルアルコールから4工程で調製されるエステルにおいてIreland-Claisen転位を行い、二つの連続する立体化学の制御を行った。次に数工程の変換を経てヒドロキシアミン部位とアルデヒド部位の構築を行った後、鍵反応である1,3-双極子付加環化反応を試みたところ、反応は円滑に進行し新たに三つの立体化学が制御された三環性骨格の構築に成功した。一方、Sarain AのC3位の四級炭素の構築は困難を伴ったが、ジアステレオ選択的なヒドロキシメチル化反応が効果的であることを見出した。続いて、適切な側鎖を導入した後閉環メタセシス反応により飽和13員環の構築を達成した。本合成戦略において最も挑戦的な課題となったのは、立体的に著しく遮蔽されたメチン部位での炭素-窒素結合形成であるが、いくつものアプローチで試行錯誤を重ねた末、二重結合の導入とヨードアミド化反応により所望の結合形成が可能であることを見出した。これにより、Sarain Aの特徴的な中心骨格の構築に成功した。現在は、飽和14員環の構築を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた1,3-双極子付加環化反応による三環性骨格および四級炭素の構築を完了したことに加えて、飽和13員環およびジアザトリシクロウンデカン骨格の構築を達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
Sarain Aの全合成を達成するにあたって残る課題は、N1-C3'結合形成の効率化と不飽和14員環の構築である。前者に関しては、ヨードアミド化がより高い選択性で進行するように活性化基や保護基等をデザインすることを考えている。また後者に関しては、独自性の高い効率的なアプローチを模索していきたい。
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Research Products
(3 results)