2012 Fiscal Year Annual Research Report
特異な多環性骨格を有する海洋性アルカロイド(-)-Sarain Aの合成研究
Project/Area Number |
11J04981
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
肥後 拓也 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機合成 |
Research Abstract |
SarainAは、地中海沿岸に生息する海綿より単離・構造決定された海洋性アルカロイドである。抗菌、殺虫、抗腫瘍活性といった幅広い生理活性に加え、高度に官能基化されたジアザトリシクロウンデカン骨格を含む特異な構造を有しており、合成化学的に非常に興味深い化合物である。我々は本化合物の効率的な合成経路の確立を目指し、研究を行っている。 すでに飽和13員環とジアザトリシクロウンデカン骨格の構築を達成していたが、鍵反応であるヨードアミド化反応の位置選択性が低いために目的物を十分量得ることができず、その後の変換が困難であった。 そこで異なるアプローチで鍵となる炭素一窒素結合の形成を行おうと様々な検討を行ったところ、分子アイケル付加反応によって高収率で所望の結合形成が可能であることを見出した。このアプローチによって合成経路の短工程化に成功したが、得られる生成物はC7'位の水酸基が欠如しており、立体選択的な水酸基の導入が次の課題となった。 そこで、再度ヨードアミド化反応の最適化に注力した。反応条件に加えて、各種置換基の効果も体系的に評価したところ、トシルアミドにおいて環化反応の位置選択性が大幅に向上することを見出した。そして、困難が予想されたエポキシド存在下のトシル基の除去も、低温下リチウムナフタリニドを作用させることで解決することができた。その後、チオフェノールによるエポキシドの開環を経て、C7'位の水酸基の立体化学を制御することに成功している。C8'位水酸基の立体化学は、キレート効果によりC7'位の立体化学を活用して制御することができるため、残る課題は不飽和14員環の閉環のみである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天然物の不飽和14員環の閉環を残すすべての骨格構築を達成した。今後、分子内カップリング反応と酸化度を調整することで全合成を達成できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
SarainAの全合成を達成するにあたって残る課題は不飽和14員環の構築のみである。C8'位の不斉点はC7'位の水酸基の立体化学を活用して制御することを計画している。そして、最後の大員環の閉環についてはトリエン部位でのカップリング反応を検討する予定である。
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