2012 Fiscal Year Annual Research Report
広汎性発達障害における自動的な共同注意機能障害の心理・神経メカニズムの解明
Project/Area Number |
11J05000
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
魚野 翔太 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / 視線 / 共同注意 / 脳磁図 |
Research Abstract |
MEG(脳磁図)を用いて定型発達者における自動的な共同注意に関わる神経基盤の時空間構造を検討した実験の再解析を行った。この研究では、逸れた視線・矢印とそうでない視線・矢印を手がかり刺激として呈示し、後続するターゲットの検出課題を課されている参加者の脳活動を計測した。行動指標では、ターゲットが視線・矢印の示す方向と同じ方向に出現した時に他の条件と比較して参加者のターゲット検出にかかる時間が短くなることが示された。逸れた視線・矢印とそうでない視線・矢印に対する神経活動を比較したところ、刺激提示後200ms以降で上側頭領域と下前頭回において逸れた視線・矢印に対する強い神経活動が示された。逸れた視線と矢印に対する神経活動は共通した時空間構造を示しており、200-250msで上側頭領域、250ms以降で下前頭回、300ms以降で再び上側頭領域という順であった。これらの視線と矢印に共通した神経活動は行動指標とも相関関係を示しており、視線・矢印による注意シフトに関わっていると考えられる。今後、広汎性発達障害群との比較研究も行う予定であるが、定型発達者を対象としたこの研究では論文執筆が終了し、国際誌への投稿を準備しているところである。 今年度から、多数の定型発達者と広汎性発達障害者を対象として同一参加者からさまざまな指標のデータを取得し、関係性を調べる研究を開始した。具体的には、性格特性に関する質問紙調査、ASDの診断ツールを用いた症状の評価、共同注意などASDの主要な特徴についての実験心理学的研究、それらの特徴の背景にある生理活動や神経活動の測定、MRIを用いた脳構造の撮影、を多数の同一被験者で行っている。定型発達者と広汎性発達障害者がこれらの指標においてどのように異なるか、それぞれの指標が各群においてどのような関係性を持っているかを検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
定型発達群での視線・矢印の注意シフトに関わる神経基盤の時空間構造を同定するための解析に時間を要したため、自閉症スペクトラム群との比較研究を実施するには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
定型発達群での視線・矢印の注意シフトに関わる神経基盤の時空間構造を同定し、解析方法についても洗練させることができたので、定型発達群での実験と同じパラダイムを用いて自閉症スペクトラム障害群との比較研究を実施する。
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