2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J05013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 綾子 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | MT1-MMP / 癌細胞浸潤 / コンピューターシミュレーション |
Research Abstract |
本研究「細胞外二重鎖RNAの細胞内輸送メカニズムの解明」は、細胞外からの二重鎖RNAの取り込み機構を含む、細胞内輸送メカニズムの未解明の機構を明らかにすることを目的としている。しかし、輸送経路や関係している分子など未知の部分を多く含んでいる。そこで、本研究を遂行するにあたり第一段階として、癌細胞浸潤におけるMembrane-type1 MMP(MT1-MMP)の細胞膜挿入の細胞内輸送のモデルを作製することから始める。既に明らかとなっているように癌細胞の浸潤にはMT1-MMPが不可欠であり、細胞膜表面で不安定であるMT1-MMPは浸潤仮足への継続的な挿入が必須事項であると考えられる。しかし、挿入されたMT1-MMPが細胞膜上でどのような形態をとっているか実験的に明らかにされていない。そこで、細胞膜上のMT1-MMP挙動モデルを構築しコンピューターシミュレーションを用いてMT1-MMPの細胞膜上での挙動が浸潤へ及ぼす影響を明らかにすることを試みた。本モデルにおいて細胞膜上で形成されるECM分解可能な複合体の総称をM14aとし、MT1-MMPが細胞内より1回挿入された場合にM14aの形成量の時間変化をシミュレーションした。その結果、挿入と同時にpeak(Transient peak)が形成され、その後平衡状態になることが示された。次に、M14aのTransient peakと平衡状態とどちらがECM分解に重要な役割を担っているかTransient peakが生じないモデルを作製し、ECM分解能力を比較した。その結果、Transient peakが形成されないモデルではECMの分解がほとんど進まなかった。以上のことからM14aのTransient peakがECM分解に重要であることが明らかになった。細胞膜へのMT1-MMPの連続挿入は、TIMP-2阻害を回避するためだけではなく、挿入によるMT1-MMPの複合体形成そのものがECM分解に重要であることがシミュレーションで明らかになった。ECM分解を阻害するためには、細胞内からのMT1-MMPの供給そのものを阻害することが、細胞膜上でのTIMP-2によるECM分解阻害よりも、より効率的であると考えられる.このことは今後のセラピー開発に新しい可能性を示すことができた。現在、論文の投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年のデータに新たなデータ(平面から3Dモデルへの展開)を加えることでより深いシミュレーションの結果を得ることで、より興味深い論文を投稿することを試みた。年度内に投稿完了予定であったが、現在revise中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間で行ったシミュレーションの結果をまとめた論文を既に投稿済みである。そこで、来年度よりシミュレーションの考えを基にした実験を行う予定である。
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