2011 Fiscal Year Annual Research Report
ハンタウイルス感染症の新規病態モデルを用いた免疫病原性発現機構の解析
Project/Area Number |
11J05017
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
駒 貴明 北海道大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ハンタウイルス / 肺水腫 / 好中球 / SCIDマウス |
Research Abstract |
ハンタウイルスはヒトに感染すると肺水腫を引き起こす。機能的なT細胞、B細胞が欠失している成熟C.B-17Scid(SCID)マウスにハンタウイルスのプロトタイプであるHantaan virus(HTNV)を感染させることで、患者で認められるような肺水腫を認めた。我々はこの肺水腫を標的とし、本研究の大きな目的である病態の中心的役割を担っている細胞集団の特定を行った。 肺水腫は感染後35日をピークとして、病理学的には70-90%の肺胞腔に組織液の浸出または貯留を認めた。またその肺の湿重量は非感染のものと比較して2倍に増加していた。肺水腫が出現し始める、感染28日目の肺中の各種白血球の割合を調べると、好中球、マクロファージ、NKT細胞が有意に増加していた。また血中では感染28日目をピークに好中球の割合が約25%増加していた。次に、これらの細胞をそれぞれ枯渇させ、肺水腫の出現に与える影響を病理学的に評価した。 結果、好中球を枯渇させたHTNV感染SCIDマウスでのみ、顕著に肺水腫の出現が抑制された。一方で、マクロファージやNKT細胞を枯渇させたマウスでは、コントロールPBSまたはコントロールIgGを投与した感染SCIDマウスとの間に有意な差を認めなかった。 ハンタウイルス感染症では血中の好中球数が増加するのが特徴的で、その意義は明らかとはなっていなかった。しかし、今回、好中球がハンタウイルス感染症の病態に関与している可能性を示唆する結果を得た。これまで肺水腫の出現にはT細胞の関与が示唆されてきたが、本研究ではT細胞の直接的関与は否定的であり、今後の詳細な研究の標的となることが期待される。 また移入モデルを用いた解析も継続しており、T細胞が好中球を肺に誘導している可能性を示唆させる結果や、B細胞がHTNV感染の回復に重要な役割を果たしているという結果も出始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部、当初の計画とは異なり、肺水腫の病態解析には移入をしないモデルを用いることになった。しかし、免疫細胞を移入をせずにT細胞、B細胞が欠失しているSCIDマウスを用いることで、より簡潔に肺水腫の出現に関与している細胞の特定につなげることが出来た。また計画通りに、ウイルス抗原やゲノム量を解析し、さらには肺中の免疫細胞の割合を検討した点は評価すべき点である。移入モデルでの解析も継続しており、T細胞が好中球を肺に誘導している可能性を示唆させる結果も出始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、HTNV感染SCIDにおいて好中球がどのように肺水腫を引き起こしているのかを詳細に解析するとともに、免疫細胞移入時にT細胞やB細胞がその病態に与える影響についても検討を行っていく。
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