2012 Fiscal Year Annual Research Report
ハンタウイルス感染症の新規病態モデルを用いた免疫病原性発現機構の解析
Project/Area Number |
11J05017
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
駒 貴明 北海道大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ハンタウイルス / 肺水腫 / 好中球 / SCIDマウス / 血管透過性 |
Research Abstract |
ハンタウイルスは血管内皮細胞を標的細胞とし、血管透過性の亢進を引き起こすことで肺水腫を引き起こすと考えられている。成熟SCIDマウスにHantaan virus(HTNV)を感染させることで、病理学的に患者で認められるような肺水腫を認めた。初年度ではこの肺水腫を標的とし、病態の中心的役割を担っている細胞集団が好中球であることを明らかにした。次年度では好中球と肺水腫との詳細な関係、および好中球と血管透過性亢進との関係を明らかにした。 血管透過性評価の結果、HTNV感染後、肺水腫が出現し始める感染28日目の肺では軽度に血管透過性の亢進が認められた。更に、肺水腫が顕著に認められる感染33日目の肺では顕著に血管透過性の亢進が認められ、病理学的所見と一致した。一方で、好中球を枯渇させたマウスでは感染28日目、感染33日目の血管透過性の値は感染のみのマウスよりも有意に低値であった。 従って、好中球が血管透過性亢進を誘導し、肺水腫を引き起こしている可能性を示唆させる結果を得た。更に、好中球がどの血管透過性因子を介して血管透過性の亢進ならびに肺水腫を引き起こしているのかを特定するために、肺での各種血管透過性因子(TNF-α、IL-1β、IFN-γ、iNOS、VEGF、MMP-2、MMP-8、MMP-9)のmRNA量を測定した。その結果、HTNV感染によりIFN-γmRNAレベルの上昇が確認された。更に、IFN-γmRNAレベルはHTNV感染好中球枯渇群では上昇しておらず、血管透過性亢進ならびに肺水腫の出現に関与している可能性が示唆された。今後、タンパクレベルでの評価を行い、関与因子の特定を行う。ハンタウイルス感染において関与している血管透過性因子を特定することは、血管透過性亢進を起因とするハンタウイルス感染症では肺水腫のみならずその他の病態の緩和にもつながる可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に沿い、肺水腫モデルにおいて好中球は肺水腫を誘導していることを明らかとした。更に、ハンタウイルスに感染することで好中球が血管透過性の亢進を誘導し、肺水腫を引き起こすことを明らかにした点は評価すべきである。更に、その血管透過性亢進ならびに肺水腫に関与している血管透過性因子のmRNAレベルでの関与を明らかにし、次のタンパクレベルでの解析につなげた点も評価すべきである。一部、免疫脾細胞移入時の免疫抑制機構と病態との関係については、有用な結果を得ることができず継続した研究を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
好中球と肺水腫・血管透過性との関係について、最終的に関与している血管透過性因子を特定する。可能であれば、その因子の阻害剤投与実験を行い、治療薬としての評価も検討する。またHTNV以外のウイルスでも同様の病態を示すかを確認する。免疫脾細胞移入時の免疫抑制機構と病態との関係については再度条件検討を行うが、ハンタウイルス感染において免疫病原性発現機構に関与している血管透過性因子を特定を優先する。
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Research Products
(2 results)