2011 Fiscal Year Annual Research Report
ニワトリ品種をモデル動物として用いた「脳ヘルニア」形成機構の解明
Project/Area Number |
11J05037
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉村 圭司 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ニワトリ / Crested Polish chicken / cerebral hernia / 近交系ニワトリ / 形態計測 / 連鎖解析 / 脳浮腫 / モデル動物 |
Research Abstract |
本研究は、Polish系ニワトリ(Polish)と呼ばれるニワトリ品種における"cerebral hernia"に着目した。ニワトリにおけるcerebral herniaは、脳と頭蓋骨の形態異常に関連する遺伝形質である。しかし、この形質の原因と形成メカニズムはいまだに不明であった。 研究の結果、[1]ニワトリ胚を用いた形態計測から、Polish胚の脳腔が著しく拡張していることが明らかとなった。[2]野生型の脳と比較して、Polish型の脳は多くの水分を含んでいた。[3]Polishと近交系ニワトリの交配からなるリソースファミリーを用いた連鎖解析により、cerebral herniaの原因遺伝子座がニワトリ連鎖群LGE22に位置づけられた。 今回、Polishの脳において観察された脳腔の拡張や水分多含は、ヒトの水頭症(脳浮腫の一種)の主な特徴と類似していた。すなわち、以上の成果は、Polishが脳発生の異常や脳浮腫の発症と関連する可能性を示唆する。よって、Polishはヒト疾患モデル動物としての潜在性を持つことを示す現象が明らかとなった。 また、cerebral herniaが常染色体劣性遺伝するということは約100年前から知られていたが、それ以降、遺伝的基盤の実体は不明のままであった。本研究の連鎖解析は、cerebral herniaの原因遺伝子座の位置を染色体レベルにまで絞りこみ、原因遺伝子の同定を現実的なものにする基盤情報を提供した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な最終目的は、ニワトリにおけるcerebral herniaの「原因遺伝子の同定」と「形成メカニズムの理解」であった。後者に関しては、胚時期の脳腔の拡張という具体的な事象を突きとめるに至った。一方で、前者に関しては、ニワトリゲノムに関する情報不足の影響もあり、原因遺伝子座の位置する染色体を特定するに留まった。よって達成度に関しては(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
Polishを疾患モデル動物としての有効活用するためには、cerebral herniaの形成メカニズムを理解しなければならない。これまでの研究では、Polish初期胚における脳の形態に関する情報を得ることができなかった。Polish型と野生型を外見的に区別する難しさから、形態学的なアプローチにより形成メカニズムに迫ることには限界があり、効率的ではないと考えられる。一方、本研究の成果によって、原因遺伝子座が位置に関する情報が得られた。よって、原因遺伝子座や、その影響を受ける遺伝子を明らかにすることにより、形成メカニズムの解明に近づくことができる。原因遺伝子座の位置する染色体の有力候補は特定されたが、具体的な座位は不明なままである。よって今後は、ニワトリゲノム情報の活用やDNAマーカーの確立を行い、より詳細な連鎖解析を進める必要がある。
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Research Products
(3 results)