2011 Fiscal Year Annual Research Report
ダブルショー実験におけるニュートリノ混合角シータ13の直接測定
Project/Area Number |
11J05080
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中島 恭平 新潟大学, 自然科学系, 特別研究員(PD)
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Keywords | ニュートリノ / ニュートリノ振動 / 原子炉 / 素粒子 / Double Chooz / 混合角 / θ13 |
Research Abstract |
<研究目的> ダブルショー実験は、最後に残されたニュートリノ振動パラメータシータ13の測定を目指す原子炉ニュートリノ実験である。原子炉からの距離が異なる2箇所に同一構造の検出器を設置し、原子炉および検出器由来の不定性をキャンセルしつつ、高い精度でニュートリノ数の変化を捉えることを目的とする。 本実験は、初めの1年半において後置検出器のみによる測定を行い、その後前置検出器を完成させ、両方の検出器による測定を約3年半行う予定となっている。 <研究実施状況> 2010年度は後置検出・器の建設が行われており、特に申請者は検出器のあるフランスのショー原子炉に長期滞在し液体シンチレータの導入に参加した。2011年3月までに検出器の調整を終え、4月より物理データの収集を開始した。ニュートリノ振動を精密に測定するためには、宇宙線μ起因の不安定核種^9Li、不定性が大きい高速中性子、環境γ線による偶発イベントなどのバックグラウンドを正確に評価する必要がある。このうち、申請者は特に評価の難しい高速中性子バックグラウンドの評価を行った。解析の過程において、当初予想していなかったミューオン粒子崩壊イベントが含まれてしまうことが判明し、高速中性子と併せてその量を同定した。 最終的にダブルショー実験は約半年のデータを用いて、短い距離でのニュートリノ振動の兆候を世界で初めて観測した(sin^22 θ_<13>=0.086±0.041(stat.)±0.030(syst.))。この結果は2011年11月9日に国際会議で発表され、11月10日に日本で記者会見が行われ、テレビや新聞に取り上げられている。また論文はPhysical Review Letter 108, 131801 (2012)に掲載された。申請者はこの結果発表後、富山大学と金沢大学に赴きその成果発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダブルショー実験は4月よりデータ取得を開始しており、申請者は主にニュートリノ振動測定に必要なバックグラウンドの評価を行い、2011年11月にニュートリノ振動の兆候を捉えた結果を発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ニュートリノ事象に対するバックグラウンドの評価は概ね良く評価されているが、検出器の観測エネルギーに対する理解がまだ浅く、データとシミュレーションの間で不一致が見られる。この差を生じている原因を調べ、より高い精度でニュートリノ振動測定を行う必要がある。これらの解析を進めるとともに、予定されていた前置検出器の建設のための準備を行い、2基の検出器による測定を2013年度までに目指す。
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