2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J05089
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
市川 まどか 岐阜大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 単為生殖型肝蛭 / 交雑 / 起源 / ミトコンドリア / 中国 / ミャンマー |
Research Abstract |
アジアには、減数分裂異常により精子形成能を失った結果、単為生殖により増殖すると考えられている単為生殖型肝蛭(Aspermic Fasciola fluke)が分布する。我々は、単為生殖型肝蛭はミトコンドリアDNAのND1型がFh-C4型のFasciola hepaticaもしくはFg-C2型のF.giganticaを母方の祖先として、F.hepaticaとF.gigaticaの種間交雑により中国において出現し、アジア各国へ伝播したことを明らかにしてきた。さらに、中国で得られた単為生殖型肝蛭のDNA型の解析結果から、単為生殖型肝蛭の出現には少なくとも2世代以上の交雑が関与していることが示唆されたため、F.hepaticaとF.giganticaの雑種F2世代の作成を目指して交雑実験を行った。その結果、雑種F2世代を3虫体得ることに成功した。雑種F2世代では、全虫体で貯精嚢内に成熟精子がわずかしか認められず、顆粒状の異常精子が大半を占めていた。このような所見は単為生殖型肝蛭と一致することから、F.hepaticaとF.giganticaの交雑により、子孫虫体の精巣に減数分裂異常の原因となる何らかの変化が起こったと考えられ、単為生殖型肝蛭の交雑起源説が支持された。 また、中国と国境を接するミャンマー由来の肝蛭を新たに得て分子学的解析を行ったところ、ミャンマー産肝蛭88虫体のうち、7虫体が単為生殖型肝蛭であった。ミトコンドリアDNAのND1型は、単為生殖型肝蛭7虫体全てにおいて中国産単為生殖型肝蛭で優勢であったFg-C2型と一致した。したがって、ミャンマー産単為生殖型肝蛭もまた、中国を起源とする単為生殖型肝蛭と同系統であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝蛭の交雑実験について、F2虫体を得ることに成功したとともに、アジア産肝蛭の分子学的情報に新たな知見を加え、その研究成果を国内外へ広く発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、単為生殖型肝蛭は中国で誕生したのちに周辺地域へ伝播したと考えられた。ミトコンドリアDNAのND1領域における遺伝的多様性が極めて乏しいことから、単為生殖型肝蛭は中国から急速に周辺地域へ拡散したと推測された。しかしながら、これまでのところ、中国の周辺地域由来の肝蛭虫体に関する分子学的情報の蓄積は充分ではない。そこで、新たに異なる地域由来の肝蛭虫体を採取して分子学的解析を行うとともに、ミトコンドリアDNAの解析領域を増やしてより詳細な検討を行い、単為生殖型肝蛭の出現年代および伝播速度を明らかにする予定である。
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