2011 Fiscal Year Annual Research Report
男性不妊および上皮間葉転換における細胞接着分子CADM1の機能解析
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11J05125
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊東 剛 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 上皮間葉転換 / 肺腺がん / K-ras / CADM1 / モデルマウス |
Research Abstract |
本年度は、まずCADM1遺伝子のレチノイン酸による転写制御機構について論文を発表した。マウス胚性がん細胞P19においてレチノイン酸受容体αは転写因子Sp1を介してCADM1遺伝子のプロモーター領域に作用し、レチノイン酸存在下において転写共役活性化因子と結合してCADM1遺伝子の発現を上昇させることを明らかにした。 CADM1は種々のがんにおいてがん抑制遺伝子として機能するが、非小細胞肺がん細胞株A549において13-CISretinoicacidを加えた場合にCADM1遺伝子の発現上昇を認めたことから、CADM1の発現低下または欠如によって起こる肺がん細胞の上皮間葉転換をレチノイン酸投与により抑制することができると予想される。 次にCADM1遺伝子の肺腫瘍抑制能についてマウスモデルを用いた解析を行った。肺発がんモデルとしてK-ras(+/lox-stop-lox-G12D)マウスを用いた。このマウスはCre recombinaseを発現するウィルスを肺へ導入することにより活性型K-rasを発現させ、肺腺がんを発生させることができる。Cadml欠損マウスとこのK-ras変異マウスを交配させ、K-ras変異によって引き起こされる肺腺がんの進展にCADM1がどのような役割を果たしているか明らかにすることを試みた。以下、K-ras変異マウスをKマウス、K-ras変異かつCadm1欠損マウスをKCマウスと呼ぶ。KマウスおよびKCマウスの肺へCre発現アデノウィルスを感染させ発生した肺腫瘍の巨視的な体積を調べたところ、肺腫瘍の体積の平均値はKCマウスの方が約2-4倍大きいことがわかった。ゆえにCADM1はK-ras変異による肺腫瘍を抑制することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
K-ras変異マウスとCadm1ノックアウトマウスを交配したKCマウスでは、K-ras変異のみのKマウスと比較して発生する肺腫瘍の体積が大きいことが明らかになった。これはCADM1がK-ras変異による肺腫瘍を抑制することを強く示唆する結果である。現在はそれぞれのマウスの肺腫瘍について病理学的・分子生物学的な解析を行っており、予備的ではあるが形態学的な差異を見出している。ゆえに当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の段階ではCADM1の上皮間葉転換(EMT)における役割を明らかにする予定であったが、EMTはがんの進展の過程で起こる現象の1つであり、肺がんモデルマウスを用いてがんの初期から浸潤・転移に至るまでを包括的に観察することにより、EMTだけでなく肺がんの進展の様々な段階におけるCADM1の役割を明らかにすることができると考えられるため、計画を修正して研究を進めている。今後はKマウスとKCマウスの肺腫瘍の一部を切り出してRNAを抽出し、マイクロアレイによる遺伝子発現解析を行うことで両マウスの腫瘍で働いている分子機構の差異を明らかにしたいと考えている。
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[Journal Article] Aberrant expression of tumor suppressors, CADM1 and 4. IB, in invasive lesions of primary breast cancer2012
Author(s)
Takahashl Y, Iwai M, Kawai T, Arakawa A, Ito T, Sakurai-Yageta M, Ito A, Goto A, Saito M, Kasumi F, Murakami Y
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Journal Title
Breast Cancer
Volume: (掲載確定)
DOI
Peer Reviewed
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