2011 Fiscal Year Annual Research Report
耐摩擦摩耗特性に優れた柱状晶形マルチフェイズコーティング膜の開発
Project/Area Number |
11J05128
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小宮山 翔子 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | コーティング / Ti-Mo-N / スパッタリング / 摩擦摩耗特性 |
Research Abstract |
TiN(窒化チタン)は特性のバランスの取れた硬質コーティング膜として、切削工具や医療材料、鋳型の離型材など、様々な分野へ利用されているが、摩擦係数が高く、耐摩耗性に課題を残している。本研究ではコーティング材料の耐摩擦摩耗特性向上の観点から、(Ti,Mo)酸窒化物の柱状晶形マルチフェイズ(多相)コーティングを創製し、その摩耗機構を解明することを目的とした。 反応性スパッタを用いて種々の組成のTi-Mo-N薄膜を作製し、Ar雰囲気中で熱処理したところTi/Mo比が1:1および1:3で(Ti,Mo)窒化物と金属の(Ti,Mo)からなるマルチフェイズコーティングが得られた。 Mo濃度の増加とともに低摩擦係数を呈することが分った。さらに、摩耗特性は合金元素の濃度だけでなく窒素濃度に強く依存することが見出された。高窒素濃度のTi-Mo-Nは低窒素濃度のものより、摩耗酸化してMo酸化物を生成しやすいことが分った。Mo酸化物は潤滑性に優れており、Mo酸化物が形成されると相手材の焼付きを防ぎ、優れた耐摩耗性を示すことが分った。 反応性スパッタを用いて種々の組成のTi-Mo-No薄膜を作製したところ、スパッタにおける酸素流量を増加させると薄膜の構成相がδ-(Ti,Mo)Nの結晶相からアモルファス相に変化することが分った。アモルファス単相では硬度が低く、密着性も低いため、摩擦摩耗特性は低下した。 以上のように、Ti-Mo-Nについて、窒化物+金属のマルチフェイズコーティングが得られ、摩耗機構について詳しい知見が得られた。今後、窒化物+酸化物のマルチフェイズコーティングの創製を目指し、今までの摩耗機構解明手法を用いて、摩耗特性を調査していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ti-Mo-Nについて詳細な調査を行い、摩耗機構解明手法として、摩耗痕の断面TEM観察やRaman分析などを行うことが出来たが、(Ti,Mo)酸窒化物のマルチフェイズコーティングの創製には至っていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
成膜時の反応ガスの分圧比を制御し、熱処理を加えることで、酸化物と窒化物のマルチフェイズコーティングを目指す。種々の熱処理条件を試す。摩擦摩耗特性の評価としてスクラッチ試験による密着性評価を行い、更なる摩耗機構の解明を目指す。
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