2011 Fiscal Year Annual Research Report
心理的本質論に関する適用メカニズムの解明から応用へ
Project/Area Number |
11J05143
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
塚本 早織 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 心理的本質論 / 民族 / 偏見 / 多文化共生 / 文化 / 文化間比較 / 素人理論 |
Research Abstract |
人は「心理的本質論」と呼ばれる素人理論を用いて、人の集合体に何らかの意味や根拠を付与する。本研究では、自民族を「他民族とは本質的に異なる意味や根拠を持つ集合体である」と認識することが、他民族他者への排他的な態度の形成に寄与している可能性を実証的に検証した。実験では、このような心理的本質論信念を強めるために、民族は血縁や遺伝子などの生物学的な根拠によって分類されていると教示し、心理的本質論信念を抑制するために生物学的分類を否定する教示を行った。その結果、心理的本質論の抑制が態度に与える効果は確認されなかったが、心理的本質論信念が高められた参加者は、心理的本質論に関わる実験的操作を受けなかった参加者と比較して外国人に対する排他的な態度を形成するようになった。このことから、日本人が異なる民族の他者と社会的な共存関係を築く際に、心理的本質論が影響を与えることが示唆された。さらに、日本における他民族他者との共存方法を模索するために、日本人の心理的本質論の特徴を精緻に検証する必要があると考えた。これまで文化普遍の概念として捉えられてきた心理的本質論が、文化や社会的規範との相互作用によって形成される可能性を検証した。本研究では、日本人とオーストラリア人の自己と自民族に関する心理的本質論信念を比較した。その結果、オーストラリア人は自己を事象の基準として考える傾向があり、自己に対する心理的本質論信念が強くみられたのに対し、日本人は自己よりも自民族に心理的本質論信念を認識しやすいことが明らかになった。この結果は、心理的本質論信念を適用しやすい対象やその程度が文化によって異なることを示しており、文化や社会的背景と認知の相互作用に関する知見に重要な示唆を与えたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心理的本質論と他民族他者に対する排他的態度の形成に関する因果的関係を示唆することができたことは、当該研究分野への貢献であるといえる。しかし、心理的本質論が差別的態度の低減に与える直接的な効果の立証に至らなかった点を考慮して、おおむね順調という評価になった。加えて、心理的本質論の日豪比較研究から、文化的背景が心理的本質論の適用範囲と関連している可能性が示唆され、文化と心理的本質論の関係に関する新たな知見を与えたが、雑誌論文への掲載が決定していないため、計画以上の進展とは評価できないと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
心理的本質論の測定方法を発展的に検討する必要があると考える。これまで、英語で作成された既存の尺度を日本語に翻訳して使用していたが、先行研究で明らかになっている下位尺度と概念的に一致した結果が一貫して得られていない。そのため、今後は心理的本質論の日本語版尺度の質を向上させること、および言語的表現に頼らない間接的・潜在的な手法で心理的本質論を測定する方法を考案したいと考えている。考案した測定方法を、心理的本質論のメカニズムの解明や文化間比較の研究に適用する予定である。既に得られているデータを海外雑誌に発表することを目標とし、国際学会での発表を積極的に行うことで日本における心理的本質論研究の発展を報告する予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Revealing cultural differences in essentialist beliefs about the self and the in-group2012
Author(s)
Tsukamoto, S., Holland, E., Haslam, N., Karasawa, M., Kashima, Y.
Organizer
Group Processes and Intergroup Relations Pre-Conference of The 12th Annual Meeting of Society for Personality and Social Psychology
Place of Presentation
San Diego, CA
Year and Date
2012-01-26
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