2011 Fiscal Year Annual Research Report
ベンザインを経る新規多置換複素環合成法の開発と生理活性アルカロイド合成への応用
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11J05145
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野地 寿治 東北大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ベンザイン / マグネシウムビスアミド / カップリング / インドリン / 複素環 |
Research Abstract |
ベンザインは芳香環内に三重結合を有する非常に反応性に富んだ合成中間体である。芳香環の隣接する2ヵ所を一挙に官能基できる特異な反応性はベンゼン環が縮関した複素環構築の重要な中間体となると期待される。今年度はベンザインを経る新規多置換複素環合成法の開発に精力的に取り組んだ。 まず、ベンザイン発生、分子内環化と続く官能基化の一連の変換に最適な塩基を調べるため、マグネシウムアミドを網羅的に検討した。その結果、Mg(TMP)_2-2LiClがベンザインを経る環化だけでなく、環化後のアニオン中間体の安定化にも有効であることがわかった。これにより単純な求電子剤による官能基化だけでなく、金属交換を経るクロスカップリングといった多段階の変換もワンポットかつ高収率で行うことに成功した。続いて、本反応を用いインドリン7位に導入可能な置換基を検討した。単純な求電子剤としては、種々のハロゲン、アジドやヒドロキシ基などヘテロ原子、アセチル基やシアノ基の導入に成功した。また、アルキル基の導入は中間体を銅へ金属交換することで達成した。金属交換後、Pd触媒存在下クロスカップリング反応にてアリール基およびアルケニル基の導入、酸化的クロスカップリング条件下、アルキニル基の導入にもそれぞれ成功した。最後に、本反応を用いて、肺がん細胞株NCI-H187に細胞毒性を示すカルバゾールアルカロイドheptaphyllineの全合成を達成した。まず、市販のベンズアルデヒドに対し、位置選択的なヨウ素化、鈴木宮浦クロスカップリングをおこなった。得られたアルデヒドをアセタール保護し、環化前駆体へと導いた。この基質に対し確立した条件下、脱プロトン、ベンザインの発生、カルバゾール骨格の構築、金属交換、プレニル基の導入、アセタールの脱保護の6段階の変換をワンポットでおこない、収率60%でカルバゾールを得た。最後に、Boc基、メチル基を同時に脱保護し、5工程、総収率16%でheptaphyllineの全合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究の目的である新規多置換複素環合成法の確立において、適切なマグネシウムアミドや導入可能な官能基を調べ、一通りの検討を終了した。また、検討結果は現在論文作成段階である。さらに、確立した手法を用いて生理活性アルカロイドheptaphyllineの全合成を達成しており、本反応の有用性を実証することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は確立した条件を用いてisobazelline類の全合成を達成する。まず、100グラムスケールで調製可能なトリハロベンゼンから、ニトロオレフィンへの共役付加と数段階の変換を経て環化前駆体を合成する。さらに確立した条件下、インドリン骨格の構築と酸素官能基化を一挙に行いインドリンを合成する。さらに本反応をもう一度適用し、特異な三環性骨格へと導き、種々の官能基変換を行うことでisobazelline類へ導く。また、強力な発癌プロモーターとして知られるteleocidin Bの全合成を行う。はじめに二重ベンザイン生成の反応条件を検討し、構築が困難な下部三環性骨格の構築法を確立する。続いて、上部ラクタム部位を形成し、最短合成経路での効率的全合成を達成する。
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Research Products
(7 results)