2011 Fiscal Year Annual Research Report
分裂酵母を用いたtarget of rapamycin複合体2の活性制御機構解析
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11J05163
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
秦野 智行 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Target of rapamycin(TOR) / 分裂酵母 / シグナル伝達 / 栄養応答(グルコース) |
Research Abstract |
真核生物に保存されたTORタンパク質キナーゼは栄養やストレス、成長因子やインスリンに応答する情報伝達経路を形成し、細胞内の代謝や増殖、生存を制御する。TORはTOR複合体1(TORC1)および複合体2(TORC2)を形成する。特異的な阻害剤が存在しない為にTORC2研究は遅れており、その活性制御機構は未解明な点が多い。私はモデル生物分裂酵母を用いTORC2制御機構の解明を試みている。分裂酵母においては、TORC2経路の制御因子としてRyh1が報告されている。Ryh1は活性型/不活性型の二つの病態をとるが、活性型Ryh1を発現する細胞においてTORC2の基質Gad8のリン酸化が亢進することが報告されている。しかしRyh1によるTORC2-Gad8経路の制御機構は未解明である。 本年度はTORが自身をリン酸化する事および、このリン酸化がTORC2の活性と相関することを明らかにした。さらに活性型Ryh1を発現する細胞においてTORキナーゼの自己リン酸化が亢進する事を見出した。これらの事からRyh1がTORC2を活性化することによりGad8のリン酸化を亢進する事がわかった。 以前にグルコースがTORC2-Gad8経路を活性化する事を見出したが、本年度はこの応答がRyh1を介する事を明らかにした。活性型Ryh1認識プロープを作成し、活性型Ryh1の量を解析したところ、グルコース非存在下では活性型Ryh1の量が減少した。この事からRyh1がグルコースにより活性化され、TORC2が活性化する機構が明らかとなった。さらにRyh1によるTORC2活性化には複合体構成因子Bit61が不可欠である事が示された。活性型Ryh1発現細胞において見られるGad8リン酸化の亢進はbit61遺伝子破壊を組み合わせる事により見られなくなる。これはBit61がTORC2活性の制御点となる事を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書の年次計画の一年目に示した計画はすべて達成し、二年目および三年目の計画も順調に進捗している。今後の研究もより効果的なアプローチを取り入れていることにより、更なる進捗が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
TORC2の分子レベルでの活性制御機構の理解の為、この複合体の基質認識サブユニットでキナーゼ活性に必須であるSin1に着目する。Sin1と他の構成因子との相互作用機序を構造生物学的に理解し、TORC2の分子レベルでの制御機構に関わる知見を得る事を目指す。 また、Ryh1の更なる上流経路の探索を行う,既にRyh1の活性化因子としてはRic1-Rgp1複合体が報告されているが、不活性化因子は同定されていない。これまでに遺伝学的なスクリーニングにより不活性化因子の候補を取得したので、これらの候補タンパク質の生化学的解析を行う。
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