2012 Fiscal Year Annual Research Report
分裂酵母を用いたtarget of rapamycin複合体2の活性制御機構解析
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11J05163
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
秦野 智行 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | TOR / Sin1 / mLST8 / Wat1 / 分裂酵母 / 癌 / 糖尿病 / TORC2 |
Research Abstract |
真核生物に広く保存されたTOR複合体2(TORC2)は分裂酵母においては、キナーゼTbr1と基質認識サブユニットSin1、及びSte20およびWat1より構成される。Wat1はTORC2の機能に必須の構成因子として知られ、酵母からヒトに至るまであらゆる真核生物に保存されている。採用者はWat1がSin1とmor1キナーゼのアンカーとして働き、Sin1をmor1のキナーゼドメインに固定することを見出した。分裂酵母TORC2の基質としてはタンパク質キナーゼGad8が知られているが、このGad8とSte20の融合タンパク質を作製することにより、Wat1およびSin1の機能がバイパスされることが判明した。Gad8はWat1またはSin1非存在下ではリン酸化を受けないが、融合タンパク質のGad8はこれらの構成因子非依存的にリン酸化されていた。さらに、Sin1-Wat1の相互作用に重要なアミノ酸残基をSin1上に同定した。このアミノ酸残基は酵母からヒトに至るまであらゆる真核生物において保存されており、NMR解析や二次構造予測の結果、α-ヘリックスを形成することが示唆された。このSin1のα-ヘリックス内の残基に変異を導入することによりWat1との相互作用が著しく低下し、これらの変異型Sin1を発現する細胞においては、Gad8のリン酸化が顕著に低下した。ヒト培養細胞を用いた解析により、分裂酵母において見出したWat1の機能がヒトTORC2においても保存されることが示唆された。分裂酵母TORC2構成因子であるSin1とWat1はヒトにおいても保存されており、それぞれhSIN1、mLST8と呼ばれるが、これらのタンパク質が相互作用することを確認した。さらに、分裂酵母において同定したSin1のWat1との相互作用に重要な領域はhSIN1においても保存されており、この領域を削るとmLST8との相互作用が著しく低下することも判明した。これらの発見は、癌などの疾病との関与が示唆されるヒトTORC2経路の理解のみならず、未だ発見されていないTORC2特異的な阻害剤の設計につながる重要な知見となり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定されていたRabエフェクターを用いたRyh1のグルコース応答の解析は完結し、新たにTORC2の分子構築様式に関わる重要な知見が数多く見られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
構造生物学的な解析が今後必要になると考えられる。共同研究者との精密な議論が今後必要になると考えられる。 また、分裂酵母をモデルとして得られたこれまでの知見を、ヒト培養細胞やマウスを用いて解析する必要がある。 既に着手しているヒト培養細胞の解析を充実させるとともに、マウスの個体を用いた実験が新たに必要となる。
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