2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトES及びiPS由来心筋細胞における電気的多様性の獲得とその分子機構の解明
Project/Area Number |
11J05269
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
遠山 周吾 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ES細胞 / iPS細胞 / 心筋細胞 / イオンチャネル / 代謝 / 精製 |
Research Abstract |
ヒトES及びiPS由来心筋細胞がどのようにしてペースメーカー型・心房型・心室型といった多様性を獲得していくのかを、電気生理学的手法により評価解析し、その分子機構を明らかにすることを目的として研究を行った。これまで、遺伝子改変することなく心筋細胞を精製する技術がなかっため、非心筋細胞が混在した状況でのイオンチャネル評価が一般的であり、培養時期に応じたイオンチャネル発現量の変化を正確に評価することは困難であった。そこで、我々はまずミトコンドリア蛍光色素およびFACSを用いて高発現分画を回収する(Nature Methods 2011)ことでヒトES及びiPS由来心筋細胞を精製する実験を行った。しかしながらミトコンドリア法による心筋精製は膨大な時間と労力を要するため、より簡便で理想的な心筋精製法の確立が必要であった。そこで我々は心筋細胞における代謝の特性を利用することで、FACSを用いることなく効率的に心筋精製する方法を構築した(Cell Stem Cell 2012,in revision)。その後、培養時期に応じたヒトES及びiPS由来精製心筋細胞における電気生理学的パターン変化を解明するため、微小電極法を用いて培養早期及び後期における活動電位を調べたところ、ペースメーカー型細胞が減少する傾向にあることがわかった。またパッチクランプ法にて個々の単一細胞におけるイオン電流変化を解析したところ、やはり培養早期から後期にかけてペースメーカー電流(I_f電流及びT型Ca電流)が低下する傾向にあることがわかった。次にそのメカニズムを調べるために、精製心筋細胞のイオンチャネルの発現量変化をQPCRを用いて解析したところ、HCNチャネルやT型Caチャネルの遺伝子発現が低下する傾向にあることがわかった。以上の結果から、ヒトES及びiPS由来精製心筋細胞が培養時期に伴い、電気生理学的に成熟化を来たすことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトES/iPS由来心筋精製法に関して、より効率的に心筋精製する技術の確立が必要であり、その手法の確立及び論文化に時間を要してしまいましたが、より効率よく心筋精製することが可能となりましたため、現在のところ順調に進んでいると考えております。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を遂行する上での最も大きな問題点の一つでもありました、"効率よい心筋精製法の確立"に関しては上記に記載しましたように代謝の特性を利用することにより解決されましたので、その技術を用いて、今後ヒト精製心筋細胞の活動電位波形パターンが培養期間に応じて変化していくメカニズムをイオンチャネルの発現量等を詳細に解析し、引き続き解明していく予定です。
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Research Products
(5 results)