2012 Fiscal Year Annual Research Report
小脳核出力軸索投射の機能構築と小脳核出力信号の形成機構の解明
Project/Area Number |
11J05291
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
藤田 啓史 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 小脳 / 小脳皮質 / 小脳核 / プルキンエ細胞 / 神経解剖学 |
Research Abstract |
小脳には機能的な区分が多数存在し、それによって様々な種類の運動調節を含む多彩な機能に関与できる。しかし、小脳機能を小脳の外へ出力する唯一の源である小脳核に関しては、その電気生理学的な動作機構のみならず、その軸索投射の基本構築すらほとんど知られていない。本研究では、小脳の本質的動作機構を、小脳核の入出力を中心にして、解剖学・生理学の立場から理解することを目的とする。本年度はまず、昨年度に引き続き、小脳区分の形成過程を、小脳皮質における分子発現により区分を同定することにより胎仔期(E17.5)から成獣期まで追跡した。その結果、胎仔期の区分は特異的分子発現を持ち立体的に配置する50余りのプルキンエ細胞集団となっていること、そして、それらの集団が、スライドや分裂といったダイナミックな再構成を経て、胎児期の区分とほぼ一対一で対応付けられる成獣での区分となることが判明した(国際誌に発表)。また、この研究で見られた、ひとつの集団がふたつに分裂するという現象は、小脳の体部位局在が小脳の前と後ろとでミラーイメージになっているという従来からの知見をよく説明すると考えられた。そこで、所属研究室で蓄積していた登上線維単一軸索の投射パタンを再分析したところ、投射先への枝分かれが大きく前後に分かれているものは、上記のプルキンエ細胞集団の前後への分裂と関連付けられる傾向が確認された。すなわち、小脳の体部位局在形成の基盤に、小脳区分の発達過程が関わっていることが示唆された。これらの結果を国際誌に総説として発表した。また、これらを踏まえて、単一の小脳核ニューロンにおいて、その興奮特性を決めるイオンチャネルの発現量を分子生物学的に定量し、ニューロンを分類し、そのタイプに応じた小脳核内での局在と小脳区分との対応を調べる研究を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度から引き続いて、個体の発生を通して小脳区分がどのように出来上がるのかを明らかにし、小脳区分ごとの解剖学的・生理学的な違いをより本質的な観点から検討することができるようになった。さらに、小脳核ニューロンに関しては、イオンチャネル発現量を単一ニューロンごとに調べると、興奮性ニューロンの中にも2つ以上の異なるタイプのニューロンが存在することが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
小脳神経回路の動作機構を明らかにして小脳核出力信号の形成機構を理解するために、今後は特に小脳核ニューロンに焦点をあて、その分子発現・興奮特性・局在・投射パタンを統合して解析していく。まず、異なるタイプの小脳核ニューロンを分類するための特異的マーカー分子を検索しておく。興奮特性を電気生理学的に調べた後の切片や、神経トレーサーの注入後の切片において、そのマーカー分子に対する免疫染色を行うことでニューロンを同定し、マーカー、電気生理、投射を互いに関連付け、さらにニューロンの局在から小脳区分との対応も同定する。
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