2012 Fiscal Year Annual Research Report
加齢に伴う身体能力の自己認識低下が心身機能に及ぼす影響とその脳機能特性の検討
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11J05365
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
桜井 良太 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高齢者 / 跨ぎ越し動作 / 自己能力評価 / 転倒 / 外出頻度 |
Research Abstract |
申請者のこれまでの研究から、高齢者は若年者に比べ自己の跨ぎ越し能力を過大評価する傾向にあり、高齢者の転倒原因の一因が低下した身体能力の過大評価にある可能性が示唆された。H24年度は、H23年度に確認された高齢者の跨ぎ越し動作における過大評価傾向がどのような要因に関連しているかを、知覚・認知機能、性格特性、生活状況から明らかにすることとした。 209名の健康な高齢者を対象に健康状態(既往歴など)および外出頻度を聴取し、認知機能の検査を行った。これらの調査・検査の後、自己能力評価検査である跨ぎ越し判断テストを行った。跨ぎ越し判断テストでは、参加者の7m前方に跨ぎ越し用のバーを水平に設置し、上下に移動させ、実験参加者が跨ぎ越せると思う最大の高さを跨ぎ越し判断の最大値(予測高)として測定記録した。その後、実際にその高さのバーを跨がせ、実際に跨ぎ越せた最大の高さを測定した。結果、跨ぎ越し判断テストの評価エラーと有意な相関が認められた項目は外出頻度のみであった。外出頻度を高外出頻度群(1日に1回以上の外出)と低外出頻度群(2,3日に1回以下の外出)の2群に分けて比較したところ、低外出頻度群は高外出頻度群に比べて予測高を跨ぎ越せなかった者の割合(過大評価者)が有意に高いことが明らかとなった。これは外出頻度(身体活動頻度)の低下に伴い、運動機能の低下の程度を再認識する場が減少するため、結果として能力評価が過大評価傾向に偏向したものと推察される。加えて、追加調査にて高さ知覚の正確性や心理特性(衝動性、うつ傾向など)といった要因との関連性についても検討したが過大評価傾向との関連は認められなかった。したがって、現時点までの調査結果では、高齢者の過大評価傾向に強く関連する要因は外出頻度のみであり、一般的な認知機能、知覚機能、性格特性の関与は低いものと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
200名を超えるデータから高齢者の跨ぎ越し動作における過大評価の一因を明らかにすることができた。 また、H25年度終了予定の追跡調査に関しても順調にデータ収集が進んでおり、十分に信頼性の高い資料が得られている。したがって、本研究はおおむね順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は対象者に対する追跡調査を完了させ、跨ぎ越し能力とその自己評価が加齢とともにどのように変容していくのかを明らかにしていく予定である。またPET(PositronEmission Topography)を用いた脳機能画像データの収集がH24年度で完了しており(対象者125名)、データ解析が終了次第、跨ぎ越し判断テストとの関連性を検討する予定である。
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Research Products
(11 results)