2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J05377
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
冨樫 ひろ美 茨城大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | X線吸収分光法 / 弱い相互作用 / ブルー銅タンパク質 / 広域X線吸収微細構造 |
Research Abstract |
金属タンパク質は、生体内において重要な役割を果たしており、分子内における非共有結合性の弱い相互作用がタンパク質の機能発現に重要な働きを持つことが明らかになっている。また第二配位圏に位置するアミノ酸側鎖と、配位子の間に生じる非共有結合性の弱い相互作用が、タンパク質の機能発現に重要な働きを持つことが明らかになっている。本研究では、ブルー銅タンパク質の第二配位圏を様々なアミノ酸に置換し、活性中心の電子状態への影響とタンパク質の機能の相関について系統的に研究することを目的としている。 本年度は、銅タンパク質であるシュウドアズリンの野生型と、第二配位圏に様々なアミノ酸を置換した変異体シュウドアズリンのX線吸収スペクトルを測定し、銅のK吸収端スペクトルから銅イオンの電子状態解析と広域X線吸収微細構造スペクトルから金属イオン周辺の構造について解析を行った。 第二配位圏に芳香族アミノ酸を置換した変異体の銅イオンの電子状態解析の結果から、活性中心の銅イオンがより還元された状態に近いことが明らかとなった。また配位原子であるチオラートの電子状態解析から、芳香族アミノ酸を導入することで銅イオンとチオラートの共有結合性が高くなることが示唆された。広域X線吸収微細構造スペクトルの比較をしたところ、約3Aまでのスペクトルの大きな変化はみられなかった。このことから、野生型シュウドアズリンと芳香族アミノ酸置換変異体では活性中心構造は、大きく変化していないと考えられる。 これらのことから、第二配位圏のアミノ酸残基と配位子の間の弱い相互作用が活性中心の電子状態を大きく変化させることができるということが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、第二配位圏に位置するアミノ酸残基と配位子の間に生じる弱い相互作用について、系統的な知見を得ることである。金属タンパク質において、この第二配位圏に芳香族アミノ酸が位置することで、ユニークな機能発現をしているものが多いため、芳香族アミノ酸と活性中心の電子状態の変化を明らかに出来た事は重要であると考えられるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
東日本大震災の影響により測定できなかった共鳴ラマン分光法の測定を行い、活性中心の銅イオンと配位子の結合距離の変化について検討し、電子移動反応についての検討はストップトフロー法を用いて行う予定である。 また、X線吸収分光法から得られた電子状態と電子移動反応の変化、また活性中心の結合距離の変化を系統的に整理していく。
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