2011 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア融合機構に啓発された革新的遺伝子送達システムの創製
Project/Area Number |
11J05438
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安崎 友香理 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 遺伝子治療 / 遺伝子送達 / ミトコンドリアデリバリー / ハイドロダイナミクス法 / ビジュアルバイオロジー / 骨格筋デリバリー / MITO-Porter |
Research Abstract |
本年度は、骨格筋ミトコンドリアを標的とした外来遺伝子送達の検証を中心に研究を展開した。 (1)組織観察法の確立とミトコンドリア標的型キャリア(MITO-Porter)の組織内動態評価 骨格筋生組織切片を作成し、骨格筋のミトコンドリアや各種構造の染色条件を最適化し、共焦点レーザー顕微鏡にて観察する方法を確立した。次に、キャリアの組織内動態を評価するため、MITO-Porterを蛍光標識して骨格筋に局所投与し、観察を行った。その結果、MITO-Porterは骨格筋の筋線維内部に到達していないことが確認され、キャリアを筋線維内に到達させるために何らかの工夫が必要であると考えた。 (2)投与法の工夫及びミトコンドリアへの遺伝子送達評価 筋線維内に到達するまでに存在する基底膜等の各種バリアを突破するため、Georgia大学Prof.Liuらにより開発されたハイドロダイナミクス投与法の適用を検討した。本法は、pDNA溶液を、圧力をかけて投与することで、遺伝子を骨格筋核内に送達可能とする画期的な投与法である。本法により筋線維のバリアを突破し得ると考え、pDNAを投与24時間後に骨格筋を回収し、ミトコンドリア内のpDNA量を定量的PCR法により測定した。その結果、ミトコンドリアへの遺伝子送達が認められ、特に184μgのpDNAを3mLの生理的食塩水に希釈し、20秒で投与する条件がミトコンドリアへの遺伝子送達に最適であることが明らかとなった。また、FISHによるpDNA検出の結果、ミトコンドリアとの共局在が観察され、組織学的にもミトコンドリアへの遺伝子送達が認められた。 本研究では、世界初のin vivoミトコンドリアへの遺伝子送達を示した。次年度は、本投与法に適応可能なキャリアの構築により、ミトコンドリアへの選択的かつ効率的な遺伝子送達システムの開発への研究展開が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、特にPCRによるミトコンドリアへの遺伝子送達定量評価系の確立は、今後の研究においても基盤となる評価であり、達成度を考える上で大きく評価すべき点と考えている。また、当初の予定にはなかったFISHを用いた組織学的送達評価により、ミトコンドリアへの遺伝子送達が多面的に示すことができた。投与法を考慮したキャリア設計のため、投与条件の最適化ができたことも、今後の評価の基盤が整った点で評価できる。更に、ハイドロダイナミクス投与法によるミトコンドリア毒性をCOX染色等により評価し、顕著な毒性は認められないことを明らかとした。以上より、本年度の目標は順調に達成でき、当初の予定以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目的は、ミトコンドリアに送達された外来遺伝子の機能発現(転写・翻訳等)を得ることである。これまでは送達遺伝子量の上昇に着眼しており、今後もその方針は貫く所存である。しかし、外来遺伝子の機能発現・は、送達した量がいかに多くても得られるとは限らない。今後は、送達する遺伝子の量だけでなく、質に関しても考慮して研究を進める必要があると考えている。例えば、mtDNAはpDNAとは異なる転写・複製機構を持つため、通常のpDNAではミトコンドリア内で機能しない可能性がある。その解決のため、mtDNAの転写・翻訳機構をそのまま生かした投与遺伝子の設計を考えている。
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Research Products
(4 results)