2012 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア融合機構に啓発された革新的遺伝子送達システムの創製
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11J05438
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安崎 友香理 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 遺伝子治療 / 遺伝子送達 / ミトコンドリアデリバリー / ハイドロダイナミクス法 / ビジュアルバイオロジー / 骨格筋デリバリー / MITO-Porter |
Research Abstract |
[具体的な実施内容] (1)ミトマウスmtDNA模倣型遺伝子の構築 自然発症型のミトコンドリアDNA異常細胞(=変異は任意ではない)を用いて作製されたミトコンドリア病モデル動物であるミトマウスは、疾患を呈しながらも生命を維持していることから、異常mtDNAには、少なくとも転写・翻訳に必要なカセットは備わっていると考えた。そこで、ミトマウスmtDNAを模倣したΔmtDNAを構築し、その転写・翻訳を検出することで、ミトコンドリア外来遺伝子の発現検証を行うことを考えた。 (2)ミトコンドリア遺伝子発現機構を再現した人工遺伝子の設計、構築 ミトコンドリアにおける転写・翻訳機構には、核とは異なるmRNAの成熟過程が存在する。その過程を再現することで転写・翻訳が実現できると考え、プロモーター(HSP)以外に転写にも必要と思われる各種mtDNAコード遺伝子の前後配列を組み込んだ2-3kbp程度の人工遺伝子を設計した。本設計遺伝子を大量調製し、マウスにハイドロダイナミクス法にて投与し、RT-PCR法にて導入した遺伝子のmRNA検出を試みた。 [意義・重要性] これまでの一般的理解として、ミトコンドリア特異的プロモーターの付加とコドンの適切な書き換えにより、外来遺伝子はミトコンドリアで発現すると考えられており、その達成の律速は「送達量」にあると考えられていた。しかしこれまでの研究成果から、私は、送達の問題のみに着目せず、遺伝子の配列についても改良・検討する必要があると考え、検証した。その結果、ミトコンドリア発現型遺伝子の構築に成功し、律速は遺伝子の「品質」にあったことを明らかとした。ミトコンドリア研究の基盤と、本研究の最終目標であるキャリアを用いたin vivoミトコンドリアにおける外来遺伝子発現の基盤を構築できたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標であるミトコンドリアにおける遺伝子の機能発現を達成するためには、ミトコンドリアで機能し得る遺伝子の構築が不可欠である。一般的にはミトコンドリア特異的プロモーターとレポーター遺伝子を組み合わせれば発現は達成できると考えられていた。しかし、ミトコンドリアで発現するとされていた遺伝子を投与しても発現が得られなかった。ミトコンドリアへの遺伝子送達の「量」のみならず、送達すべき遺伝子の「質」に関しても問題点を指摘し、実際に遺伝子の構築に踏み込んだ。その結果、送達遺伝子の転写検出に成功し、ミトコンドリアDDSを遺伝子発現で評価できる基盤を築いた点は、本研究の最終目標・達成度を考える上で予想を上回る進展であり、大きく評価すべき点と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに構築したin vivoミトコンドリアへの遺伝子送達法によって、今年度に設計した遺伝子を投与したところ、少なくともミトコンドリアにおける転写が得られることが明らかとなった。最終年度は翻訳(タンパク質レベル)の検証を行いつつ、ミトコンドリアへの遺伝子送達を遺伝子発現で評価する。これを元にキャリア改良のフィードバックを行うことで、本研究の最終目標の達成が可能であると考えている。
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Research Products
(3 results)