2012 Fiscal Year Annual Research Report
赤外線衛星観測によって解き明かす、銀河の一生と物質進化の関係
Project/Area Number |
11J05457
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山岸 光義 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 赤外線 / 「あかり」衛星 / 銀河 / 物質進化 |
Research Abstract |
本年度は、「あかり」衛星の観測データを基にした近傍銀河の研究として、近赤外線スペクトル(波長2.5-5.0μm)を用いた星間氷の研究と、IRSF望遠鏡を用いた鉄輝線の研究を行った。 星間氷の研究については、近傍銀河M82において、H_2O氷,CO_2氷の空間分布の違いを議論した論文を準備中である。本論文では、銀河スケールでCO_2/H_2O比が変化していることを、世界で初めて明らかにした。CO_2氷は、活発な大質量星形成領域の近くの分子雲で効率的に生成されており、宇宙線と水素分子の相互作用によって、分子雲内で生成される紫外線が、CO_2氷生成に大きく寄与している可能性を示した。この結果は、氷を指標として、銀河内での星間環境の違いをクリアに示した結果である。近赤外線スペクトルについては、これ以外にも、近傍銀河(約200天体)に対する近赤外線スペクトルを全て解析し、スペクトルのデータベースを作成した。この近赤外線スペクトルを用いて、銀河ごと、星間環境ごとの、星間物質の進化・変化を系統的に議論するため、スペクトルの全波長域を統一的に表現出来る物理的なモデルの構築をおこなった。モデルは来年度までに完成させる予定である。 また、IRSF望遠鏡に観測提案を行い、「あかり」の観測結果からダスト破壊の兆候が見られた、近傍銀河NGC1097に対して、近赤外線[FeII]輝線のナローバンド撮像観測を行った。鉄は、通常の星間空間では99%以上がダスト中に取り込まれており、ダストが破壊されたときのみ、星間空間中に出てくると考えられている。したがって、鉄輝線は、ダストの破壊をトレースする重要な輝線である。観測で得られたデータは、現在解析中であり、この観測によって、NGC1097内のダスト破壊の状況を明らかにすることが出来ると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近赤外線における氷の吸収フィーチャーを用いて、銀河内での星間環境の変化を明らかにした。また、「あかり」衛星での結果を基にして、IRSF望遠鏡への観測提案をまとめ、実際に自ら観測を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの方針通り、近傍銀河約200天体に対する「あかり」衛星の指向観測データを基にして、個々の興味深い銀河に対する解析と、系統的な議論を行う。特に後者については、本年度に構築した、近赤外線スペクトルデータベースと、フィッティングモデルを利用し、様々な銀河の多様な星間環境において、星間物質がどのように進化、変化しているのか明らかにする。これまでの研究成果を、雑誌投稿論文および博士論文としてまとめる。
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Research Products
(21 results)