2013 Fiscal Year Annual Research Report
赤外線衛星観測によって解き明かす、銀河の一生と物質進化の関係
Project/Area Number |
11J05457
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山岸 光義 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 赤外線 / 「あかり」衛星 / 銀河 / 物質進化 |
Research Abstract |
本年度は主に、「あかり」衛星によって取得された近赤外線スペクトル(波長2.5-5.0μm)を用いて、近傍銀河に存在している星間氷の研究を行った。星間氷は、惑星における海や、有機分子などの複雑な分子の元になると考えられており、物質の進化や生命の誕生を考える上で、非常に重要な物質である。まず、前年度から準備を行っていた投稿論文を完成、発表した。論文では、近傍銀河M82内において、H_2O氷とCO_2氷の空間分布が異なっており、銀河内の大きなスケールでCO_2/H_2O比が変化していることを明らかにした。さらに、CO_2/H_2O比は星間輻射場の硬さと正の相関があることを示した。その原因として、大質量星形成に伴って起きる超新星爆発が、宇宙線を加速し、分子雲内で紫外線を生成、CO_2氷の生成に寄与している、という可能性を議論した。 次に、「あかり」衛星で近赤外線スペクトルが得られている全ての近傍銀河(z<0.03、全158天体、1031領域)に対して、上記のCO_2/H_2O比を用いた議論を拡張した。まず、全スペクトルに対してH_2O氷、CO_2氷の探査を行ったところ、H_2O氷は30天体中の125領域、CO_2氷は12天体中の54領域から検出された。このサンプルを用いて、M82の場合と同様に、CO_2/H_2O比と星間輻射場の関係を調べた所、銀河ごとに系統的に関係が異なっていること、つまり、星間輻射場以外にも、CO_2/H_2O比を決めるパラメータが存在することがわかった。さらに議論を行ったところ、CO_2/H_2O比は銀河の比星形成率と正の相関があることがわかった。つまり、銀河の星形成年齢が若く、活発であるほど、銀河内のCO_2/H_2O比は高いことを示している。一連の研究によって、私はCO_2/H_2O比が銀河内の紫外線輻射環境、および銀河の星形成進化段階と関係があるということを世界で初めて明らかにした。以上の内容を、博士論文としてまとめ、学位を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近赤外線帯に存在している氷の吸収スペクトルフィーチャーに注目し、氷の存在量が銀河の星形成進化と関係していることを明らかにした。一連の研究の集大成として、学位論文をまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、近傍銀河に対してCO_2/H_2O比の振る舞いを調べ、超新星爆発がCO_2氷生成に寄与している可能性を議論した。そこで次のステップとしては、銀河系内の星形成領域をターゲットにした、同様の解析が考えられる。銀河系内の超新星残骸に対しては、距離、年齢が詳しく調べられているものが多いので、それらをパラメータとして、CO_2/H_2O比との相関を調べることで、超新星爆発がCO_2氷生成に与える影響を、より直接的に検証することができると考えられる。
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Research Products
(10 results)