2011 Fiscal Year Annual Research Report
琵琶湖堆積物の高精度分析による最終間氷期から最終氷期への移行期の気候変動の解明
Project/Area Number |
11J05467
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長澤 重信 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 古気候 / 第四紀 / 琵琶湖 / 湖沼堆積物 / 高精度分析 |
Research Abstract |
本研究の目的は,琵琶湖湖底堆積物に記録された過去30万年間の気候変動の特徴を詳細に明らかにすることである.この目的を達成するために,本年度は以下のような研究を実施した. 1.琵琶湖堆積物コア(BIW08Bコア)の全層から,7ccのプラスチックキューブを用い,連続的に3,591個の分析試料を採取した.BIW08Bコアに含まれていた陸起源植物片の放射性炭素年代と火山灰の降下年代から構築された深度-年代モデルによると,本研究で採取した分析試料の時間分解能は,21~155年(平均71年)となる.分析試料すべての分析を行うと,極域氷床コアなどの高時間分解能の分析データ以上の時間分解能で気候変動を詳細に復元することが可能である. 2.BIW08Bコアには,放射性炭素年代測定が適用できる数mgサイズの陸起源植物片が含まれるのは稀である.放射性炭素年代測定で必要な試料サイズが1mg以下になれば,微量試料の測定が可能となり,より高精度の編年の構築が可能となると考えられる.そこで,微量試料を効率的に処理できる準自動試料調整装置の研究開発に取り組んだ. 3.東アジアの気候変動を考えるうえで重要な広域大気循環の変動を明らかにするため,堆積物に含まれる石英粒子のケイ素と酸素の同位体比を用いたデュアル同位体トレーサー法の導入を検討している.本年度は,堆積物中から石英粒子を物理的に分離する重液(SPT)分離法について検討した.その結果,堆積物を粒子のサイズ画分ごとに処理すること,重液の比重を厳密にコントロールすることが,純度よく石英粒子を分離するうえで重要であることが明確になった. 4.過去24万年間の長期的な気候変動を明らかにするため,生物起源シリカの含有量および鉱物粒子の粒度分布の分析を11cm間隔(約350年間隔)で実施した,今後,さらなる考察が必要であるが,過去24万年間の降水量変動は,全球的な氷床量の変動や日射量の変動と同期していた可能性が高いことが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では3つの課題((1)琵琶湖湖底堆積物コアの信頼のできる編年の構築,(2)琵琶湖湖底堆積物が保持する情報の明確化,(3)過去30万年間の気候変動の高精度な解明)を設定している.課題(1)については本年度の研究計画をほぼ遂行することができた.課題(2)については本年度に予定していた石英粒子のケイ素と酸素の同位体比を用いたデュアル同位体トレーサー法の方法論の確立が計画通り完遂することができなかった,その代わり,次年次以降に予定していた課題(3)の一部を進展させることができたことから,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
東アジアの気候変動を考えるうえで重要な広域大気循環の変動を明らかにするため,本年度に完遂することができなかった石英粒子のケイ素と酸素の同位体比を用いたデュアル同位体トレーサー法の方法論の確立を目指す.さらに,本研究で設定している3つの課題のうちの1つである「過去30万年間の気候変動の高精度な解明」を進展させるために,琵琶湖湖底堆積物コア(BIW08Bコア,掘削長100m)の全層を対象に高時間分解能で気候変動のプロキシ(代替指標)の分析を集中的に実施する.
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