2011 Fiscal Year Annual Research Report
特異な立体構造を有する芳香族アミンの合成と電子物性の解明
Project/Area Number |
11J05486
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒巻 大輔 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 芳香族アミン / 電気化学 / 分子磁性 / 電子スピン共鳴 / 構造有機化学 / シクロファン / 混合原子価状態 |
Research Abstract |
本年度は、過去に例のない三層積層型構造を有する芳香族アミン二種の合成に成功した。これらは分子ナノワイヤの部分構造とみなすことができ、これらの合成および物性解明は分子エレクトロニクスの実現に寄与する重要な結果である。 1.トリノレブッカー型1,3,5-ベンゼントリアミンの合成 当研究者はこれまでに、2つの1,3,5-ベンゼントリアミンをメタフェニレンフェニレンで架橋した二層積層型芳香族アミンの合成に成功していた。本年度は、1,3,5-ベンゼントリアミンをさらに一層積み重ねた三層積層型芳香族アミンの合成に成功した。さらに単結晶X線解析によって、この分子の構造を明らかにすることができた(右図)。その結果、この分子はほぼ完全なC3対称構造を有していることがわかった。またこの分子はその剛直な立体構造にもかかわらず、有機溶媒に対して良好な溶解性を有しており、溶液中における各種物性測定が可能であった。この分子のサイクリックボルタンメトリーを測定した所、サイクルごとに電流値の増加が見られ、また測定後作用電極上に膜が生じていた。このことから、この分子は酸化によって電解重合を起こすことがわかった。重合を防ぐために、酸化体がさらに安定な分子の設計を行なっている。 2.トリプルデッカー型トリフェニルアミンの合成 当研究者はこれまでに、2つのトジフェルアミンをメタフェニレンジアミンで架橋した二層積層型芳香族アミンの合成に成功していた。本年度は、トリフェニルアミンをさらに一層積み重ねた三層積層型トリフェニルアミンの合成に成功した。量子化学計算の語果、この分子のHOMO、(HO-1)MO、(HO-2)MOの3つの軌道はエネルギー的に接近しており、三電子酸化時にスビン四重項状態が発現する可能性が示唆された。また電気化学測定の結果、この分子は安定に多段階酸化できることがわかった。現在収率の改善、結晶化および電気・磁気的性質の解明を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の研究目的の一つであった多層積層型芳香族アミンの合成に成功し、さらにX線結晶解析によってこれらの構造を明らかにすることができた。これらの基礎的な電子物性についても、実験および理論計算によってある程度明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在合成に成功している1,3,5-ベンゼントリアミンおよびトリフェニルアミンをメタフェニレンフェニレンをリンカーとして積層した多層積層型芳香族アミンの電子・磁気物性を詳細に解明する。特に、電子スピン共鳴を用いて多価カチオン状態のスピン多重度を確定する。また、リンカーとしてオルトおよびパラフェニレンを用いた積層型分子の合成手法を確立する。これらの電子物性を明らかにし、リンカーの違いによる物性の変化について明らかにする。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Effects of Carbon-Metal-Carbon Linkages on the Optical, Photophysical, and Electrochemical Properties of Phosphametallacycle-Linked Coplanar Porphyrin Dimers2012
Author(s)
Y.Matano, K.Matsumoto, H.Hayashi, Y.Nakao, T.Kumpulainen, V.Chukharev, N.V.Tkachenko, H.Lemmetyinen, S.Shimizu, N.Kobayashi, D.Sakamaki, A.Ito, K.Tanaka, H.Imahori
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Journal Title
J.Am.Chem.Soc.
Volume: 134
Pages: 1825-1839
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Fusion of Phosphole and 1,1'-Biacenaphthene : Phosphorus(V)-Containing Extended p-Systems with High Electron Affinity and Electron Mobility2011
Author(s)
Y.Matano, A.Saito, T.Fukushima, Y.Tokudome, F.Suzuki, D.Sakamaki, H.Kaji, A.Ito, K.Tanaka, H.Imahori
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Journal Title
Angew.Chem.Int.Ed.
Volume: 50
Pages: 8016-8020
DOI
Peer Reviewed
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