2011 Fiscal Year Annual Research Report
雌雄性の出現と進化を解く性決定遺伝子領域の比較ゲノム学
Project/Area Number |
11J05499
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浜地 貴志 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 有性生殖 / 進化 / 雌雄性 / 精子 / 卵子 / クラミドモナス / ボルボックス / 転写因子 |
Research Abstract |
本研究は、総体として、同型配偶・異型配偶・卵生殖の各段階の生物の間で染色体領域ゲノムを比較するという縦のベクトルと、各生物における有性生殖関連遺伝子ネットワークの詳細な解析という横のベクトルを双方ともに大きく進展させることを目的とする。つまり、これまでの群体性ボルボックス目での有性生殖の進化生物学的研究を進める性特異的遺伝子領域の配列構造比較に加え、クラミドモナスの性決定遺伝子の下流因子を探索し、配偶子形成と性決定の分子機構を解明する。また、既に性染色体領域が解読されているのは同型配偶のクラミドモナスと、メスとオスの差異が最も顕著なボルボックスであり、メスとオスが進化した直前直後の段階ではない。雌雄性が出現したのはヤマギシエラとユードリナの分岐の間であり、この両者の両性の性染色体領域のゲノム比較を実施することで、雌雄性の進化の直接の原因となった遺伝子(群)をあぶり出し、更に近縁な同型配偶ゴニウムや異型配偶プレオドリナの知見により強固にすることが可能となる。 本年度は、クラミドモナスの性決定因子下流のネットワークを解明するため、特定のタンパク質と特異的に結合するDNA配列を解読する手法であるChIP-seqの実施に向けた準備を進める。具体的には、性決定遺伝子にエピトープタグをコードする配列を付加した外来遺伝子を作成する。これを、薬剤選択性マーカーであるパロモマイシン耐性遺伝子とともにガラスビーズ法を用いてクラミドモナス核ゲノムに導入して細胞中で発現させる。ここで、エピトープタグ付き性決定遺伝子をエピトープ抗体で回収し、性決定遺伝子と結合しているDNAの配列を解読する。これによって性決定遺伝子が標的する配列が網羅的に判明し、性的二型をもたらす遺伝子ネットワークの解明に寄与することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クラミドモナスの性決定因子下流ネットワークの解明に向けて、エピトープタグ付き性決定因子配列を導入したクラミドモナス形質転換体の作出と選別が予定通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
エピトープタグ付き性決定因子タンパク質が発現するクラミドモナス形質転換体が得られれば、クロマチン免疫沈降(ChIP)法によって、まず既知の交配型特異的発現遺伝子群のプロモータ領域との結合を、定量的PCRによって測定する。エピトープタグ付き性決定因子がDNAと結合してChIP法が有効であると確認出来次第、性決定因子の標的するDNA配列を網羅的に解読する手法であるChIP-seq法を実施する。
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Research Products
(11 results)