2012 Fiscal Year Annual Research Report
全宇宙年齢的銀河形成進化と重元素・ダスト形成進化史の徹底解明
Project/Area Number |
11J05514
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浅野 良輔 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 銀河進化 / 化学進化 / ダスト進化 / 星形成 |
Research Abstract |
本研究は、銀河中に存在する固体微粒子(以下ダスト)の量やサイズ分布などの違いが銀河にどのような影響を与えるかを第一原理からモデル化することによって、銀河進化を解明することを目的としている。本年度では、昨年度に構築したダストサイズ分布進化モデルをさらに発展させ、全宇宙年齢的銀河のダストサイズ分布進化モデルを完成させた。ダストサイズ分布は星形成率やスペクトルに大きく影響するため極めて重要な物理量である。 前年度までのダストサイズ分布進化モデルより、現在の銀河系に存在する小さいダスト(半径0.01μm以下)はダスト同士の衝突による破砕プロセス(シャッタリング)を考慮することで解決することができた。しかし、ダスト同士の衝突プロセスにはシャッタリングだけでなく、特に冷たい星間雲中では合体プロセス(コアギュレーション)が起こると考えられており、より正確にダストサイズ分布進化を知るにはこのプロセスを導入する必要があった。なお、コアギュレーションは、シャッタリングと同様に銀河中の至るところで起こる(このプロセスは星・惑星形成の初期段階において極めて重要なプロセスである)とされており、モデルへの導入は自然である。なお、全宇宙年齢に渡りここまで詳細にダストサイズ分布進化を第一原理的に解くモデルは本研究を置いて他にはない。なお、本ダストモデルの論文はすでにMonthly Notices of the Royal Astronomical SoCiety(MNRAS)に受理された。 また、今回構築したモデルを用いて、現在は銀河の減光曲線進化を構築した。減光曲線はその銀河に存在するダストの組成やサイズ分布を知るうえで非常に強力なツールであり、昔から精力的に議論がされている分野である。今回のモデルにより、銀河は過去に小さいダストが大量に存在していた時期を経て、現在考えられているダストサイズ分布になった可能性が示唆されており、この点より遠方に存在する銀河は銀河系の減光曲線とは大きく異なる可能性がある。現在、Herschel赤外線宇宙望遠鏡などを用いて遠方銀河の減光曲線を導出する研究が動いており、私の今年度の結果は非常にタイムリーな議論を提供できる結果となっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
銀河のダストサイズ分布に寄与するプロセスを考慮できたが、解釈が極めて難しいため、論文化に少し時間がかかってしまった。また、研究計画である銀河のスペクトル進化モデル構築と並行して銀河の減光曲線進化モデルという新しい点にも注目したため、少々研究が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在まで多少遅れは出ているが、大きな支障はでていないため、銀河のスペクトル進化モデルの構築を目標として研究を進めていく。減光曲線進化モデルは研究計画にはないが、銀河の明るさを知る上で非常に重要な物理量であるため、研究に厚みが出ると考え、計画に加えた。すでに減光曲線進化モデルに関しては、モデル化が完了しているため、論文化を始める。合わせて、スペクトル進化モデルに関しては、先行研究[例えばTakeuchi et al.(2003,2005)]を参考にして完成させる。この際に、銀河に存在する星やダストの空間情報が必要であるが、これは例えばメガグレインモデル(Inoue 2006)を考慮する。また、スペクトル進化モデルの先行研究であるRocca-Volmerange et al.(2013)を参考にモデルを完成させ、銀河進化の謎に大きく迫る。
|