2011 Fiscal Year Annual Research Report
心血管ホルモンによるミトコンドリア制御と骨格筋加齢およびメタボリックシンドローム
Project/Area Number |
11J05579
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三石 正憲 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 骨格筋加齢 / 骨格筋ミトコンドリア / 身体能力 / 高蛋白食 / TORC1 |
Research Abstract |
加齢による骨格筋の変化、すなわち骨格筋加齢が身体能力およびエネルギー代謝に与える影響を検討した。8、20、50、100週齢のマウスを用いて骨格筋量や身体能力、耐糖能、単離ミトコンドリア活性の評価を行った。骨格筋量や筋力は20週齢で最も多く、20週齢以降加齢と共に減少した。持久力および骨格筋ミトコンドリア活性、耐糖能は8週齢以降加齢と共に低下した。骨格筋量制御の主要因子であるTORC1活性を評価したところ、20週齢以降TORC1活性は低下しており、筋量の時間的経過と並行していた。骨格筋ミトコンドリア活性は、持久力の時間的経過と並行して8週齢以降連続的に低下していた。ミトコンドリア制御の主要因子であるAMPKはミトコンドリア機能と同様に8週齢以降持続的に活性低下していた。次に、骨格筋量増加作用が知られ、骨格筋加齢治療における有用性が期待されている高蛋白食を8週齢から50週齢までマウスに約1年間与え、同様の項目を検討した。通常食群と比較し、高蛋白食群では骨格筋量および筋力が増加していた。一方、持久力および耐糖能は筋力の増加にもかかわらず低下していた。高蛋白食によりTORC1活性は活性化していたが、AMPK活性は低下し、単離ミトコンドリア活性も低下していた。長期の高蛋白食によるTORC1の慢性的な活性化がAMPKを抑制し、ミトコンドリア機能不全を惹起した可能性を考慮し、TORC1の選択的阻害剤であるラパマイシンの投与実験を行った。ラパマイシンによるTORC1の阻害で骨格筋量および筋力は低下したが、AMPKおよびミトコンドリア活性は改善し、持久力および耐糖能の悪化も改善した。加えて、ラパマイシンによるTORC1の阻害は、加齢に伴うミトコンドリア機能低下も抑制し、持久力および耐糖能の悪化も改善させた。これらの結果から、慢性的なTORC1の活性化はAMPKの抑制を介してミトコンドリア機能不全を惹起する可能性が示された。また、高蛋白食負荷の実験から、骨格筋加齢治療には筋量を増加させることのみでは不十分であり、骨格筋ミトコンドリア機能を改善させることも重要であることが示唆された。これらの知見は、加齢人口の増加により骨格筋加齢の予防・治療が重要な医療的および社会経済的問題となっている現代において、骨格筋ミトコンドリア機能の重要性を示した点で非常に意義深いものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験の大半を行い、一定の結果および知見を得られたことは評価できると考えている。骨格筋ミトコンドリア機能が加齢による身体能力の低下およびエネルギー代謝の低下に密接に関与している可能性を示し、骨格筋加齢の予防および治療にミトコンドリア機能維持が重要である可能性を見いだせた点は、今後の研究の展開にも非常に有意義であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き骨格筋加齢が身体能力およびエネルギー代謝に与える影響を検討し、内分泌因子の補充による新規治療法の開発を目指す。レニン過剰発現TgマウスやAT1R欠損マウスを用いた検討も並行して行う予定であるが、実験を順調に遂行するだけの匹数を安定して確保する体制の確立を急ぐ。それまでは内分泌因子の補充が骨格筋加齢に与える影響の検討を重点的に行っていく。
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Research Products
(5 results)