2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J05622
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
関口 豊和 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 宇宙マイクロ波背景放射 / 観測的宇宙論 / インフレーション / 位相欠陥 / 非ガウス性 / 素粒子的宇宙論 |
Research Abstract |
本年度私はインフレーションモデル初めとする初期宇宙の理論モデルについて、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)などの現在及び将来の宇宙論的観測を用いて制限する事を調べた。研究内容は大きく2つに分けられる。 まず宇宙初期に作られ宇宙の構造形成の種となったと考えられる初期揺らぎの性質について重点的に研究を行った。単純なインフレーションモデルでは初期揺らぎはガウス分布した断熱揺らぎになることが予言される。初期揺らぎの非ガウス性や非断熱性を調べる事で単純なインフレーションモデルを他のモデルと区別する事ができ、近年注目されている。私は昨年度に引き続き理論モデルの観測への予言を調べるとともに、本年度は新たに実際の観測を用いて揺らぎの非ガウス性の制限を与えることを行った。具体的には等曲率揺らぎの非ガウス性に対する3点相関関数に基づく制限を初めて与えた。またこの研究を発展させ高次の相関関数を用いた初期揺らぎの非ガウス性への観測的制限を与える事にも成功している。関連して、CMBでは観測できない小さなスケールでの初期揺らぎの振幅が、将来の21cm輝線を用いてどのように制限されるか、その制限によるインフレーションモデルの区別可能性についても研究を行った。 一方でこれまでの研究を生かし、宇宙紐やドメインウォールなどの宇宙論的な位相欠陥に対する観測的制限可能性についても私は幾つか研究を行った。宇宙紐に関しては放出される重力波の観測可能性及び観測的制限が宇宙紐のモデルに与える知見について調べた。一方、アクシオンモデルで予言される宇宙論的スケールでのドメインウォール・ネットワークについて、その放出するアクシオン暗黒物質の量を求めた。 大規模なドメインウォールの第一原理シミュレーションと、CMBのデータ解析を応用した統計手法を組み合わせる事で、アクシオン暗黒物質の量を精確に見積もる事に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、CMB観測データを用いて初期揺らぎの持つ様々な種類の非ガウス性を制限する手法を確立するとともに、またその手法を計算コードとして実装する事ができた。この研究は当初の計画には含まれていないものであるが、本来の目的である「インフレーション理論モデルの観測的区別」を研究する上で重要であり、研究計画は時流に合わせ的確に変更されたと言える。一方で、21cm輝線観測の制限など当初の計画の内容も進んでおり、総合的に見て研究計画は当初の計画より進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に確立した非ガウス性を制限する手法を用いて、インフレーションモデルを含む様々な初期揺らぎの生成機構に対してCMB観測を用いて制限を与える。特に昨年度末に公開されたPlanck衛星のデータを用いる事で、これまでの制限を更新するとともに、より広範囲のモデルに対し非ガウス性による制限を与える。一方でこれまで別々に研究を進めてきた将来の21cm輝線と重力波の観測について、組み合わせをとる事でインフレーションモデルがどのように制限されるかを調べる。最終的には、これらの研究をまとめ、現在・将来の観測によるインフレーションモデルの程度区別可能性をまとめる予定である。
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Research Products
(11 results)