2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J05693
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森 義治 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分子シミュレーション / ATP合成酵素 / 第一原理計算 / 拡張アンサンブル法 |
Research Abstract |
拡張アンサンブル法を使用した分子シミュレーションを実行することにより,ATP合成酵素における化学反応を理解することが可能となる。そのような系に拡張アンサンブル法を適用するために以下の事柄を実施した。 まず,化学反応を取り扱うために,量子力学的な方法を用いた分子動力学シミュレーションを実行することができるプログラムを採用した。そのプログラムに拡張アンサンブル法を実装し,効率的なサンプリングを可能とした第一原理分子動力学シミュレーションプログラムを作成した。 次に,われわれが作成したプログラムを用いて実際に効率のよいシミュレーションが実現できることを示すため,水中の分子のプロトン移動反応において計算を試みた。つまり,拡張アンサンブル法を用いた第一原理分子動力学シミュレーションを実行することにより,水中のマロンアルデヒドにおける分子内プロトン移動反応に関する正確な反応自由エネルギー曲面を計算できることを示した。 この研究では,特定の反応座標を効率よくサンプルできる拡張アンサンブル法を使用した。このシミュレーションの結果,エネルギー障壁が高い遷移状態に関しても十分なサンプリングができ,化学反応における自由エネルギー曲面を正確に計算できることが分かった。また,この研究では実際に水分子を含んだシミュレーションを行ったことから,溶媒に関する解析を行うことにも成功した。この研究成果は,近々学術論文誌に投稿予定である。 これらのことから,第一原理シミュレーションに関しても拡張アンサンブル法は有用であり,生体系の化学反応を理解するための効率的な方法を示すことができた。この方法により,ATP合成酵素内の化学反応を理解することができると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度における計画では,計算プログラムの改良およびその予備シミュレーションを実行することが目標であった。上記の研究実績で述べたように,これらのことは達成され,学術論文を投稿する準備までの成果を出すことができたためおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から新しい拡張アンサンブル法を用いた第一原理分子シミュレーションを実行することができるようになり,またそれらの有用性も分かった。24年度では,これらの方法および作成したプログラムを使用して,実際のATP合成酵素に対して第一原理分子シミュレーションを実行する。 シミュレーションを実行した後,ATP合成の化学反応機構を分子論的に明らかにする。つまり,ATP分子の化学反応の様子をシミュレーションのデータから明らかにするとともに,その化学反応を可能にしている周囲のタンパク質環境の影響を考察する。
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Research Products
(4 results)