2011 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞のトランスサイトーシスを介した実質細胞標的化薬物送達システムの構築
Project/Area Number |
11J05746
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田丸 みな 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 脳 / 薬物送達システム / リポソーム / 標的化 / リガンド / in vivo / マウス / 蛍光顕微鏡 |
Research Abstract |
本研究では、末梢血管からの脳実質移行性キャリアを用いた薬物送達システムの構築を目指している。 本年度は、キャリア本体となるリポソームに、脳標的性が報告されている各種リガンド候補分子を修飾し、その有用性をin vitro、in vivoにおいて評価した。本年度の研究は、キャリアを末梢血管から脳へ移行させるステップを担っており、続くキャリアの脳血管内皮細胞から実質へ移行させる為の研究と同様、非常に重要な研究である。 1.レプチン由来ペプチド修飾リポソームの脳移行性評価 これまでの研究で、本キャリアはin vitroで脳血管内皮細胞標的性を有することが示唆された。(Tamaru M et al. BBRC. 2010 394(3): 587-92)そこで、蛍光標識した本キャリアをマウスに尾静脈投与し、継時的に脳組織を摘出、キャリアの局在を蛍光顕微鏡を用いて観察した。キャリアの構成、実験条件の変更等を行ったが、本キャリアの脳移行性は確認できなかった。 2.各種脳標的化ペプチド修飾リポソームの有用性評価 レプチン由来ペプチド同様、脳移行性が報告されている各種ペプチドをリポソームに修飾し、ヤウス脳血管内皮由来細胞への取込み、脳組織への移行性を調査した。 (1)各種リガンド候補ペプチドのリポソームへの修飾方法の検討 まず、各種ペプチドをリポソームへ修飾する為、PEG修飾アンカー脂質と結合させた。しかし、ペプチドの物性上、従来の方法で本分子をリポソームに修飾することができなかった。そこでリポソーム調製後にリガンド候補分子を修飾する改良法を開発した。 (2)キャリアのin vitro、in vivoにおける有用性評価 1.同様、2.(1)で作成したキャリアについても調査したが、in vivoにおいて脳標的性を示すキャリアは確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度中に脳血管内皮細胞標的化リガンド(レプチン由来ペプチド)とトランスサイトーシス標的化リガンドのDualリガンドキャリアの開発を計画していた。しかし、in vivoにおいてレプチン由来ペプチド修飾リポソームの脳移行性が確認できなかった。そこで、文献情報に基づき他のリガンド分子の探索を行った。これまでの研究では、キャリアの脳標的性を示すことができず、計画としては遅れたものの、各種リガンド候補分子の物性の違いがキャリア開発のネックになるという重要な知見を得られた為、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、脳標的性が報告されているペプチドをリガンドとして使用すると、本分子の物性によっては、キャリアの改良を進める上で、リガンド修飾量の増加や他の機能性素子との共修飾が難しいことが分かった。本問題を解決する為、既存のペプチドではなく新規核酸アプタマーリガンドの創製も試みる。アプタマーの作成には脳血管内皮細胞を標的としたCell-SELEX法を用いる。標的に細胞自体を用いることで、未知のリガンドを標的としたアプタマーの習得が可能となる。また、核酸で構成されたアプタマーは従来のペプチドリガンドより物性上、リガンドとして取り扱いやすいと期待される。さらに、アプタマーを用いた正常脳血管内皮細胞への薬物送達システムは報告されていない為、本研究は技術開発という面でも有用である。
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