Research Abstract |
メタボリックシンドロームで増加するトリグリセリド高含有リポ蛋白(TG-rich Lp)に関しては,酸化物特異的な測定法が存在せず,その酸化変性の有無や生化学的性状,臨床的意義については全く不明である。本研究では,酸化TG-rich Lpに対するモノクローナル抗体(G11-6)あるいは酸化LDLに対する自己抗体を認識する抗体(G11-2)を用いて,酵素免疫測定法(肌ISA)を確立し,酸化TG-rich Lpの血中濃度や存在様式,診断的意義を明らかにすることを目的とした。 G11-6とG11-2のそれぞれのクローン細胞を培養し,定法に従いmRNAを抽出してcDNAを作製した。超過変部領域(VH,VL)をPCR法で増幅させ,サブクローニング後にDNA配列とアミノ酸配列を解析した。BLAST検索により,モノクローナル抗体G11-6およびG11-2の超過変部のアミノ酸配列と一致する既存の抗体は無く,これらが新規の抗体であることが確認された。 G11-6を用いるELISAは,早期金属酸化LDLに対する選択性が大きく,終末酸化LDLとは反応しない。既存の酸化ストレスマーカーでは両者を区別して認識できなかった。また,血清をゲルろ過HPLCで分離して本ELISAで測定したところ,重度肝疾患患者ではTG-rich LDLの位置に,脂質異常症患者では大型LDLの位置に,健常者では小型LDLの位置にそれぞれピークが出現した。G11-6はトリグリセリド代謝に関連して出現する酸花リポタンパク質を認識する新規な抗体であり,肝疾患や脂質異常症患者の病態把握や治療法評価に新知見を与える可能性が示された。 G11-2を用いるELISAは肝疾患患者の血清レベルにおいて,G11-6を用いるELISAと強い主相関を示し,重度肝疾患患者の重症化に伴い高値を示した。引き続き,症例数を増やして検討予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
トリグリセリドリッチな酸化リポタンパク質を認識するモノクローナル抗体G11-6とゲル濾過HPLCと組み合わせうことで,G11-6と反応するリポタンパク質のプロフィールと疾患との関係が明らかになってきた。G11-6の超過変部領域の構造は既存の抗体と一致しないことが確認され,JST支援による国際特許出願に向け最終的段階にある。成果発表は継続的に行うており,国内外の学会発表も積極的に参加している。両抗体の特許出願を完了したので,申請者を筆頭著者とする論文を専門領域の国際誌に投稿中である。国内検査薬メーカーや海外検査センターとの秘密保持契約下の情報交換が開始され,全体として順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
G11-6と反応するリボタンパク質の定性分析は一定の進捗があった。今後はさらに臨床的意義・有用性について明らかにする必要があり,そのためには抗体の認識部位の確認試験や症例数を増やすことが課題である。G11-6と同様に新規な超可変部領域を持つことが確認されたG11-2モノクローナル抗体は,酸化リポタンパク質に対する自己抗体を認識するが,このような自己抗体が肝疾患の予後に関連するという海外の報告も出てきており,G11-2についても実用化に向けた研究を推進する必要がある。
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