2012 Fiscal Year Annual Research Report
Si・Ge量子細線の構造制御と電気伝導に係る物性解明およびMOSFETへの応用
Project/Area Number |
11J05847
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森岡 直也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シリコン(Si) / シリコンナノワイヤ / 量子細線 / 表面ラフネス / MOSFET / 水素アニール / 表面拡散 / 表面構造制御 |
Research Abstract |
Si LSIにおけるMosFETにおいて,素子微細化に伴う顕著な短チャネル効果や特性ばらつきが問題となっている.これに対し,断面寸法が数~十数nmとなるSi細線をチャネルとするSi細線MOSFETが短チャネル特性が良好であるため注目されている. 集積回路内にSi細線を形成する場合,リソグラフィと反応性イオンエッチング(RIE)を用いることが多いが,本手法により作製した細線では,太さの揺らぎと側壁ラフネスが存在している.これらはクーロン閉塞やキャリヤ移動度低下を引き起こす可能性があり,低減する必要がある. Si細線の平坦化手法として水素アニールが報告されている.細線におけるキャリヤの輸送特性は細線方位に強く依存すると考えられるため,様々な方位を有する細線の平坦化の実現が非常に重要となる.しかし,様々な方位のSi細線構造に対する水素アニールの挙動は十分理解されていない.本研究では,直径20nm程度または以下の微細Si細線のアニールを実現するために水素アニールの条件を最適化した上で,アニール前後の細線の断面形状や寸法を詳細に調べた.微細な細線はアニール中にソースドレインパッド領域と細線の接続部において切断に至るが,その切断しやすさは細線の方位に依存し,[110]>[112]>[111]>[100]の順に安定であることがわかった.この安定性は,最近報告されたSi細線の水素アニールにおけるPlateau-Reyleigh不安定性の方位依存性と一致しており,異なる切断過程ではあるが類似の物理現象が生じていると考える.また,切断しやすい方位と表面原子の自己拡散速度に相関関係があり,切断しやすい方位の細線では,細線の長さ方向と周囲方向の両方への表面原子の自己拡散が速いことを見出した.本結果は各種方位の平滑Si細線作製における指針となるだけでなく,Siナノ構造の表面におけるSi原子の挙動を明らかにしてゆくためにも非常に重要な知見といえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
細線平坦化技術の開発や平坦化処理に対するSi細線の挙動等の研究は着実に進行させることができた.しかし,MOSFET作製に必要となるポリシリコンゲート電極形成技術の開発に時間を要した.ポリシリコンゲート技術は一般的に用いられる技術だが本研究室では初の試みであり,ポリシリコンの成長,極薄ゲート絶縁膜に対するポリシリコンの選択加工,不純物導入,ゲート絶縁膜/Si界面の欠陥不活化のすべてのプロセスを立ち上げる必要があったためである.このため,初年度の装置トラブル等による遅延を取り戻すことが困難であり,当初予定していたデバイスの試作および結果の理論的検討までは至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
各方位の微細なSi細線を水素アニールにより平坦化する技術に加えて,MOSFET作製に必要な要素技術はほぼすべて確立することができた.このため,計画からは遅延しているが,平坦化処理を施したSi細線を用いてMOSFETを作製し,細線におけるキャリヤ輸送の詳細な検討を進めてゆく予定である.また,本研究ではGe細線MOSFETの試作を予定していたが,実際に試作するためには加工条件を確立する必要がある.当初,Ge細線加工の基礎検討は一年次,二年次の研究と並行して進めてゆくことを予定していたが,これまでの研究遅延のために実施できていない.このため,最終年度となる来年度内にGe細線MOSFETの試作および評価を実施することは容易ではない.そこで,研究計画を変更することにはるが,理論的検討によってGe細線におけるキャリヤ輸送について研究し,将来の高性能Ge細線MOSFET実現に向けた基礎的検討を実施する.
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