2012 Fiscal Year Annual Research Report
光励起状態における構造変化の制御を機軸とした機能性π電子系の創製
Project/Area Number |
11J05855
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
名倉 和彦 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | メカノクロミズム / トリポクロミズム / ピエゾクロミズム / 蛍光 / 高圧化学 / 構造変化 / ダイヤモンドアンビルセル |
Research Abstract |
本研究では、π共役化合物の新規な機能性の発現を目的に,光励起状態における大きな構造変化を利用することに着目した. 昨年度,プロペラ構造から平面な構造への変化による機能性の発現を期待し,テトラチアゾリルチオフェンを設計,合成し,その物性評価に取り組んだ.その際テトラチアゾリルチオフェンは,結晶状態において3次元水素結合ネットワークにより構築された2量体構造を形成し,エキシマー発光に由来する黄色蛍光を示すことを見出した.さらに,これをすり潰した場合,2量体構造に乱れが生じ,緑色蛍光へ変化するトリボクロミズムを示すことを明らかにした.本年度は,テトラチアゾリルチオフェンの結晶状態における構造を変化させることで特異な固体物性の発現を期待し,静水圧下における物性評価に取り組んだ. ダイヤモンドアンビルセルを用いた静水圧下での蛍光スペクトルの測定を行ったところ,圧力に応じて蛍光極大が次第に長波長シフトし,橙色蛍光を示すことを見出した.さらに,次第に圧力を除くことで元の黄色蛍光へ可逆に戻ることから,テトラチアゾリルチオフェンがピエゾクロミズムを示すことを見出した.常圧および加圧下におけるX線構造解析およびIRスペクトル,固体NMRスペクトル,DFT計算の結果から,すり潰しによる短波長シフトは水素結合ネットワークの崩壊に伴うエキシマー形成の阻害に起因し,静水圧下の長波長シフトは二量体構造におけるπ平面の近接化に起因することを明らかにした.この成果は,メカノクロミズムの発現における構造と物性の相関について重要な知見を与えるとともに,固体状態における電子構造の制御の可能性を示したという点で意義深い。
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Current Status of Research Progress |
Reason
最終年度
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度
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