2012 Fiscal Year Annual Research Report
シリコンナノ構造による熱電変換特性の向上と測定技術の開発
Project/Area Number |
11J06002
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
MOHDSALLEH MohdFaiz 静岡大学, 創造科学技術大学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 熱電変換 / ゼーベック係数 / ナノ構造 / 不純物バンド / フェルミエネルギー |
Research Abstract |
熱電変換技術の実用化には熱電変換効率の向上が第一の研究課題である。熱電変換効率を上げるための一つの手段として、ナノ構造の導入によるゼーベック係数の向上が検討されている。本研究では、シリコンの微細加工技術を利用して、電子の低次元系を実現し、ゼーベック係数に与える電子の閉じ込め効果を明らかにすることを目的とする。我々は、電子閉じ込め効果を観察するためには不純物バンドの影響を受けない試料に対してフェルミエネルギーを精度よく制御する必要があることを見出してきた。このような条件を満たすフェルミエネルギー制御用試料を設計・作製し、ゼーベック係数増大に対するナノ構造の有効性を実験的に示す。 本年度は、不純物バンドの影響を除去するために、表面に電極を有するバルクサイズのSOI試料を作製し、Si層に外部電圧を印加することによるフェルミエネルギーの制御の可能性を調べた。その結果、SOI試料のゼーベック係数が外部電圧印加により変化することを見出した。SOI基板のバンド構造を考えると、PドープSOI試料のゼーベック係数の変化と定性的に一致しており、外部電圧によりゼーベック係数を制御できることが示された。また、SOI膜中のキャリア分布を考慮してゼーベック係数を理論的に評価した。その結果、理論的に得られたゼーベック係数は、実験結果と定性的に一致し、SOI試料のゼーベック係数が、主に理め込み酸化膜との界面付近のキャリア密度によって決まることを明らかにした。 現在、ゼーベック係数に与える電子の閉じ込め効果を観察するために、ナノワイヤ状のSOI試料を作製して測定している段階である。このSiナノワイヤ試料に対して、外部電圧を連続的に変化させることにより、ゼーベック係数のフェルミエネルギー依存性を細かく測定し、電子閉じ込め効果を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外部電圧印加によりフェルミエネルギーを制御してSOI試料のゼーベック係数を制御できることを明らかにした。さらに、定量的な評価には、フォノンドラッグの効果を考慮する必要があることもわかってきた。現在、Siナノワイヤ試料を作製し、ゼーベック係数測定を始めている段階であり、近いうちに、ナノ構造化による熱電特性の向上が示されるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
外部電圧印加によるナノワイヤ状のSOI試料のゼーベック係数の変化を測定し、リファレンスとしたバルクSOI試料の結果と比較し、ゼーベック係数に与える電子閉じ込め効果を明らかにする。また、ナノ構造の試料のゼーベック係数を評価するためには、温度を精度よく測定する必要がある。そのため、sOI試料上にマイクロオーダのSi島を作製し、このSi島に対して温度を変化させたときの表面電位変化を測定し、KFMを用いたsOI試料の温度測定方法を確立する。
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